国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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東シナ海・黄海魚名図鑑(日・中・韓国間における魚種名の整合)

[要約]
 東シナ海・黄海産魚介類359種(内魚類330種)について、日・中・韓国の研究者が会し、分類学的検討を行った結果を取りまとめたもので、種別に形態的特徴をイラストと解説で示し、学名、3国名及び英名、分布などを記載した。また、3国名を付した全種のカラー写真を巻頭に掲げた。


西海区水産研究所・資源管理部
中国東海水産研究所、中国科学院海洋研究所
韓国釜山水産大学校、韓国国立水産振興院
[連絡先]  0958-22-8158
[推進会議] 西海ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     資源生態
[対象]     魚類、甲殻類、頭足類
[分類]     普及


[背景・ねらい]
 東シナ海・黄海の魚類相は極めて多様性に富み、かつ有用種が多いことが特徴的である。この資源を日本・中国・韓国など周辺諸国が競 合しながら利用している。しかし、当海域では資源研究、生態研究、貿易等全ての基礎となる魚種区分(分類)が各国とも的確に行われていな い事例が少なくない。また、漁獲統計でも、形態の類似した複数種をこみにして取り扱っているものもあり、資源研究の妨げになっている。さ らに漁獲物が大陸棚から陸棚斜面域の深みにまで拡大されるにつれ利用される種も増加し、魚種区分の混乱はさらに進展している。
 このような背景の下に、日・中・韓国で共同研究を実施し、当海域並びに隣接海域の魚類を中心に分類、生態的情報の調査を行い、各国間で 魚種名(学名、各国名等)の整合を図ることにより、分類、資源研究、貿易等の分野において国際的に貢献することが期待されていた。


[成果の内容・特徴]

  1. 形態的特徴は東シナ海・黄海産種の形態計測に基づき記載した。また、カラー写真はできるだけ生体色と形態を正確に表現するように新鮮 標本の撮影に努めた。
  2. 採集標本に基づく形態測定、実際の分布調査を経て種を確認したため、重要種(マナガツオ類、タチウオ類、エソ類)でも、種の混同、見 落とし及び学名の誤用の確認、未記載種の発見等があった。
  3. 各国研究者、漁業者、貿易関係者等全てに利用しやすい以下のような構成となっている。

   ア)359種のカラー図版を巻頭に載せ、種ごとに、種コード(種の番号)及び日・中・韓国における名称(各国標 

     準名)を付した。

   イ)本文では種ごとにイラストを載せ、種の同定に有効な形態的特徴等を記し、併せて、適当と判断された学名、英     

     名及び3国名とその読み、 地理的分布を記した。

   ウ)各国名及び学名による索引を掲げ、各国名の索引には、他の2国及び学名との対応も示した。

 

[成果の活用面・留意点]

活用面:

本書はカラー写真の他、種の検索に必要な実測の分類形質を示しているため、分類研究はもとより、資源研究の分野においても活用できる。 また、世界共通の種名である学名の他、英名、日中韓3ヶ国名が示されているため研究のみでなく、3ヶ国の漁業(漁業者、漁獲統計)、貿易等 の分野においての貢献も期待される。

留意点:
本書に掲げていないものも含め、この研究で明らかにされた問題点すなわち、これまで単一種と考えられていたものが、複数種を混同してい た例や、誤った学名が付けられていた例などが発見されている。これらの一部は不明種として学名を付していないが、今後さらに生化学的比較や 、模式標本との比較など分類学的検討を加え、研究を発展させ、種の異同を明らかにする予定である。


[具体的データ]

図


[その他]
研究課題名:東シナ海・黄海の魚種名の整理、統一に関する研究。
予算区分 :経常
研究期間 :延5~6~(7)
研究担当者:山田梅芳、白井 滋、入江隆彦、時村宗春
発表論文 :東シナ海・黄海魚名図鑑、海外漁業協力財団、288pp、1995.
      日中韓魚種名会議について、日本魚類学会シンポジウム講演要旨集、1995.
      東シナ海から得られたマナガツオ科の日本初記録種Pampus cinereus
      ,日本水産学会秋季大会講演要旨集、1995.