国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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気候変動に対応したマイワシ資源変動予測モデルの開発

[要約]
 気候変動に対するマイワシ資源の変動予測モデルを作成し、マイワシの資源変動は、気候変動による飼料プランクトン量の変化が引き金となり、さらに、産卵場や成育場の拡大・縮小が変動を増幅していることを明らかにした。


中央水産研究所生物生態部資源管理研究室
連絡先    045-788-7633
推進会議    中央ブロック
専門    資源生態
対象    いわし
分類    研究


[背景・ねらい]
 マイワシは歴史的に大規模な資源変動を繰り返してきたが、その背景には地球規模での気候・海洋変動があると指摘されている。そこで、気候変動に対するマイワシ資源の応答を予測するため、太平洋側に分布するマイワシ(太平洋系群)を例に、水温の長期変動に依存した仔稚魚の成育場の餌料プランクトン量の変化と、資源密度に比例した成育場の拡大・縮小を組み込んだ資源動態のシミュレーションモデルを作成した。


[成果の内容・特徴]

  1. マイワシの生活史を卵、稚魚、成魚の3期に分け、a)成魚資源尾数に比例した産卵量の変化、b)成魚資源尾数に比例した稚魚成育場の拡大・縮小、c)個体あたりの餌料豊度に比例した卵から稚魚までの生残率の変化、d)水温変化に依存した仔稚魚成育場の餌料密度の変化を仮定した。
  2. マイワシ太平洋系群を対象とした既往の資源動態の観察結果に基づいてモデルの各過程を記述する方程式のパラメータを決定した。
  3. 黒潮続流域の冬季の表面水温を用いて1951~1994年までの44年間の資源変動のシミュレーションを行い、漁獲デ-タ等に基づき解析的な手法により計算した毎年の資源量及び再生産関係を実測値として、比較検討を行った。
  4. モデルは、水温の変動に対応した1970年代はじめ及び1980年代末の資源量の急激な増加と減少の過程や、資源量の高水準期と低水準期が、それぞれ一定期間持続する減少を再現できた。このことから、マイワシの資源変動は気候変動による餌料プランクトン量の変化が引き金となり、さらに、産卵場や成育場の拡大・縮小が変動を増幅していることが明らかとなった。


[成果の活用面・留意点]

  1. モデルは1960年代と1990年代で資源量の変化を十分に再現できておらず、資源の減少期から低水準期の加入量の決定過程に関しての実態の解析に基づく改善が必要である。
  2. 資源変動に対応したマイワシの生態的な変化や水温変動のパターンは、日本海側でも太平洋側と共通している。したがって、このモデルは日本周辺全域のマイワシ資源に対して適用可能である。


[その他]


[具体的データ]
研究課題名: 環境応答モデルの構築
予算区分 :大型別枠研究(バイオコスモス)
研究期間 :平成10年度(平成8~10年度)
研究担当者:和田時夫、岡田行親、渡邊千夏子
発表論文等:マイワシの資源変動モデル、月刊海洋、30(7)、1998.
Regimesandstock-recuimentrelationshipsinJapanesesardine(Sardinopsmelanostictus),1951-1995,Can.J.Fish.Aquat.Sci.,(inpress).