海洋に分布する植物プランクトンの現存量を海表面濃度から推定する
[要約]
本州東方海域における植物プランクトン現存量の鉛直分布を最適関数に当てはめた解析の結果、水域別の季節的変化を抽出し、海表面濃度と水中積算量の関係を明らかにして、人工衛星による海洋表層の海色情報から水中全体の現存量を推定できることを示した。
東北区水産研究所・海洋環境部
[連絡先] 022-365-9929
[推進会議] 東北ブロック水産業試験研究推進会議
[専門] 生物生産
[対象] プランクトン
[分類] 研究
[背景・ねらい]
本州東方海域における植物プランクトンの鉛直分布の季節変化を明らかにすることによって、近い将来人工衛星によって観測が開始 される海洋表層の海色情報を利用して、水中全体の植物プランクトン現存量を広域的同時的に求める。
[成果の内容・特徴]
- 植物プランクトンの鉛直分布をガウスと指数の合成関数に当てはめることによって、鉛直分布の特徴を抽出するとともに、海表面から 水深200mまでの積算量を求めた。
- 鉛直分布は、冬の低濃度一様分布から春期大増殖期の表層集中分布を経て、夏の亜表層極大、秋の表層での小規模な増殖へと季節的に 変化した。
- 海表面濃度と水中積算量には良い相関関係が認められ、海表面から水中全体の現存量を推定できることが示された。
[成果の活用面・留意点]
人工衛星により供給される海表面の植物プランクトン現存量分布図から、その海域における基礎生産量を算出して、炭素循環などの 地球環境問題の理解を深める。
[具体的データ]
図1.現在普及している水温の人工衛星画像。
図2.本州東方混合水域暖水域のクロロフィル鉛直分布の季節変化
図3.黒潮水域(A)、混合水域暖水域(B)、混合水域冷水域(C)、におけるクロロフィルの海表面濃 度と水中積算量との関係。
[その他]
研究課題名:東北海域における基礎生産の鉛直構造の解明
予算区分 :経常
研究期間 :平成7年度(平成7~9年度)
研究担当者:横内克巳、友定 彰、松尾 豊、稲掛伝三、杉崎宏哉
発表論文 :東北海域におけるクロロフィルaの鉛直分布の季節変化、
東北水研研報,第58号、1996.