国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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北太平洋アカイカ流し網代替漁法の開発研究

[要約]
 1993年からモラトリアムとなった北太平洋公海のアカイカ流し網漁業に替わる選択性の高い漁法開発を行った。アカイカの漁場形成機構を解明すると共に、釣り方法等の改良により商業的な採算性のある大型アカイカ釣りの漁法をほぼ確立した。


遠洋水産研究所 外洋資源部
[連絡先]  0543-34-0715
[推進会議] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専門]     資源評価
[対象]     あかいか
[分類]     普及


[背景・ねらい]
 アカイカはスルメイカに近縁な体重5kgを超える大型種で、世界の温帯から亜寒帯外洋域に広く分布する。1980年代には主に日本・韓国・ 台湾の流し網漁業で年間20~30万トン、日本の釣り漁業では約2万トンが漁獲されていた。当初スルメイカの代替資源として近海の釣り漁業により 小型アカイカが漁獲されていたが、続いて沖合の流し網により大型個体が大量に漁獲され、ロール製品やソフトサキイカ等の新たな需要が定着した 。しかし、主に海鳥や海産哺乳類の混獲に起因した公海流し網禁止の国連決議を受けて1992年末でモラトリアムとなった。この決議は流し網漁法を 禁じたものでありアカイカの漁獲を妨げるものではない。また、アカイカの需要は高いため、流し網の代替漁法の開発が急務となった。
 アカイカは大型である上に肉質が柔らかいため、従来の釣りでは腕(足)切れによる釣り落としが多い。また、流し網漁法の「面」的な漁場利用 に対し釣り漁法では「点」的な操業のため、効率的な漁獲に向けて漁場探索方法を確立する必要があり、集魚も極めて重要である。そこで本研究の ねらいは以下の3点に要約される。

  1. 漁場探索:広範囲な海洋観測(水温、塩分、水色、透明度、流れ)といか釣り操業の組み合わせにより、大型アカイカの釣り漁場の形成要因を 解明する。
  2. 集魚:集魚灯の改良と適正化により効率的な集魚方法を確立する。
  3. 漁獲:各種釣り針、釣り機、副漁具の改良と運用方法の改善により効率的な漁獲方法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 好漁場は、中層水温(水深100~300m)の等温線の北側への張り出し先端付近に形成された(図1)。漁場の 指標水温は200m水深で6月は10℃、8月は7℃であった。実際の漁場探索には系統的な中層水温の観測が必要であるが、漁船でも市販の簡易な 水温計をいか釣り機により昇降させて容易に観測が可能である。
  2. 船上集魚灯の出力は150kW程度で十分であり、アカイカのお関知しやすい波長はスルメイカより青色に近い。また、水中集魚灯により昼間釣り 操業が可能となった。
  3. 夜間操業での効率的漁獲方法をほぼ確立した。また、水中集魚灯を用いた昼釣りでも1日1隻平均620kgを漁獲した( 表1)。
  4. 本年の調査では1日1隻当たり平均3トン程度漁獲を揚げた(表1)。これは調査船の値であるが、流し網漁 船の1日1隻当たりの漁獲量(年により4~8トンと変動)にかなり近づいた。現状ではアカイカ価格の変動が大きいため商業的漁業成立の判断は 困難だが、その可能性は高い。
  5. いか釣り漁業一般として、船上集魚灯の出力競争による燃油コスト等の増加が従来から問題となっている。本研究の成果はスルメイカ等の釣り 漁業の効率化へも応用が可能である。

図1

 

 表1

 

[その他]
研究課題名:北太平洋におけるアカイカの高選択的漁獲技術の開発
      釣りによるアカイカの漁獲と海況との関係
予算区分 :特別研究「アカイカの高選択性漁獲技術の開発」(3~5年度)
      官民交流共同研究「大型アカイカ釣りにおける水中集魚灯の高度化」(7~8年度)
      「アカイカ好漁場探索調査」(水産庁委託、5~7年度)
研究期間 :3~9年度
研究担当者:谷津明彦、田中博之、森 純太
発表論文 :谷津明彦、1994,北太平洋におけるアカイカ釣りの展望、日水誌、60
      稲田博史・廣川純夫・谷津明彦、1995、大型アカイカの昼釣り操業における
      水中集魚灯の効果、日水誌、61。