小型超音波発信機によるサメ類の行動追跡
[要約]
小型超音波発信機を使ってオナガザメ類の行動追跡を行なった結果、ハチワレ2個体では昼夜で遊泳深度に明瞭な違いが見られ、昼は深い層に滞在し、夜は浅い層に移動した。これに対してニタリは昼夜で遊泳水深の差は小さく、魚種による行動パターンの違いが示唆された。
洋水産研究所 浮魚資源部まぐろ生態研究室
[連絡先] 0543-36-6047
[部会名] 水産資源
[専門]生態
[対象]サメ類
[分類]調査
[背景・ねらい]
まぐろはえなわ漁業では多くのサメ類が混獲され、環境保護団体等から問題視されているが、漁獲に至るサメ類の行動については殆ど知られていない。そこで超音波発信機を用いてサメ類を追跡し、その日周行動や深浅移動等について解析した。
[成果の内容・特徴]
- 平成8年度照洋丸による東部太平洋まぐろはえなわ調査において、捕獲されたオナガザメ類のニタリ1個体とハチワレ2個体に小型超音波発信機を装着して放流し、発信音を追跡して行動調査を行なった。放流は、漁獲された時点で超音波発信機を装着し、逃げないように釣り糸にロープとラジオブイを連結して海中に放しておき(図1)、操業終了後に放した地点まで引き返し、釣り糸を切断して逃がす方法で行なった。
- 追跡時間と距離は、ニタリが約17時間、11.4海里、ハチワレ1個体目が約96時間、85.2海里、2個体目が約70時間、45.7海里に及んだ。
- ハチワレ2個体では昼夜で遊泳深度に明瞭な違いが見られた。即ち、日出の少し前から潜行を開始し、日中は200~500mの水深に留まる。最深記録は723mに達した。夜間は日没少し前から浮上し始め、1個体目は100m以浅の50~80m辺りに留まり、2個体目は80~130m程の層に留まる様子が観察された。また夜間は日中に比較して上下30m程の幅で緩やかに深浅移動を繰り返していた。(図2) (図3)
- ハチワレに比べて、ニタリは遊泳層が浅い傾向が見られた。夜間の遊泳層は60~70mで、日中は僅かに深く、75~90m層であった。また、日出前から深浅移動する行動が見られ、甚だしい例では、85mから16mまで浮上し、直ちに105mまで潜行した。(図4)
- ハチワレの1個体目で観察された水深723mは、これまで知られていたよりも更に深い層をハチワレが利用している事を示している。
[成果の活用面・留意点]
- サメ類の混獲を軽減する方法を検討する上で、基礎データとして利用できる。
- 観察例数が少ないので、各々の種の典型的な行動パターンであるのか否かについては、今後の検討が必要である。
[その他]
研究課題名:外洋性さめ類の生物特性値に関する研究
予算区分 :漁業調査
研究期間 :平成8年度(平成3~)
発表論文等:平成9年11月にニューカレドニアで開かれる第5回インド・太平洋魚類研究集会で講演予定