国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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後期仔魚量推定のための表層採集データ補正法の開発

[要約]
 主要魚種の後期仔魚の表層採集データを鉛直方向へ引き伸ばす補正方法について、水深層別昼夜採集結果を用いて検討した。昼間の表層採集では後期仔魚は採集されず、昼間における表層補正係数を求めることは不可能であった。また夜間における後期仔魚の表層補正係数も,海域と体長によって変動が大きいことが示唆された。


中央水産研究所・生物生態部・初期生態研究室
[連絡先] 045-788-7638
[推進会議]中央ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]  資源評価
[対象]  浮魚
[分類]  研究


[背景・ねらい]
 資源加入量の推定には,表層曳網による後期仔魚の定量採集結果に基づく方法が時間と労力からみて容易であるが,後期仔魚の鉛直 分布特性を考慮した補正を加えないと,表層採集結果からその海域に分布していた仔魚量を正確に評価することはできない。マイワシ,カ タクチイワシ,サバ属魚類等,主要魚種後期仔魚の昼夜鉛直方向へ引き伸ばす補正方法を検討することを目的とした。


[成果の内容・特徴]

  1. マイワシ後期仔魚は,夜間に第0層および第1層でのみ採集され,昼間には採集されなかった。カタクチイワシ後期仔魚は,昼夜共に 50m以浅の第0~3層で採集された。サバ属後期仔魚は昼夜とも第0層から第2層で採集された。
  2. 採集結果をもとに,表層で採取された後期仔魚量を鉛直方向の分布を考慮して補正する係数を求めた。主要魚種毎の濾水量当たり採集 量を採集層の幅で積算し,曳網毎の全分布量Tを求め,表層の分布量T0がTに対してどれだけ占めるかをc=T0/T により求め,この逆数C=1/cを表層採集補正係数とした(表1,2)。1995年度は,昼間については,マイワシの1例をのぞき,マイ ワシ,カタクチイワシ,サバ属仔魚の表層での採集がないため表層補正係数を求めることは不可であった(表2)。1996年度はマイワシで は表層の採集が無かったため1995年と同様に不可であるが,カタクチイワシでは,1例としてC=3.6,サバ属魚類ではC=45.8,1.0の2 例が求められた。しかし,これらの例についても,実際の採集個体数はカタクチイワシで9個体,サバ属魚類で1または2個体のみであり ,本データからの主要魚種の昼間における表層補正は,1995年と同様に不可能と判断される。
  3. 夜間にはマイワシ,カタクチイワシについて表層補正係数が求められた。マイワシの表層補正係数は93の1例が求められ,1995年とあ わせると,18~2011と変動が大きかった。カタクチイワシ表層補正係数は,8,12,87と変動が大きく,1995年度とあわせると8~118と大き く変動していた。サバ属仔魚では夜間表層で採集された点が1点しかなく補正係数が得られなかったが,1995年の結果では46~162という値 が得られた。


[成果の活用面・留意点]

 1996年までの表層曳網による後期仔魚の定量評価のため,中央ブロック内の各県の稚魚ネットの表層採集を委託してきたが,マイワシ, カタクチイワシ,サバ属仔魚の定量評価のための採集道具としての有効性は現在のところ疑問視せざるを得ない。
 今後は新規加入量の予測の精度向上のためにより直接的に関連すると思われる稚魚の定量評価を,新型の大型稚魚ネット高速曳網により めざしていく必要がある。


[具体的データ]

表1

表2

[その他]

研究課題名:浮魚類卵仔魚の鉛直分布予算区分 :経常・漁業調査研究期間 :平成8~9年度研究担当者:木村量;銭谷弘(転出);大関芳沖