資源の持続可能性を評価する管理モデルの構築
[要約]
資源の持続可能性(枯渇する危険性)を絶滅確率で評価する個体群モデルを構築した。さらに、モンテ・カルロ法を使った新しいパラメータ推定法や、絶滅確率を介して異なるリスク要因を比較する方法を開発した。
北海道区水産研究所・亜寒帯漁業資源部・資源評価研究室
[連絡先]0154-91-9136
[推進会議]北海道ブロック水産研究関係試験研究推進会議
[専門]資源評価
[対象]すけとうだら
[分類]研究
[背景・ねらい]
持続的に資源を利用することが重要な問題となっているが、資源の持続可能性(枯渇する危険性)を明確な基準で評価することができれば資源管理に大いに役立つ。そこで、保全生物学で使われている個体群の絶滅確率を資源の持続可能性の尺度として導入することを考えた。まれな現象である絶滅自体を問題にするのではなく、資源の持続性を定量的に評価して管理方策に取り入れるのが目的である。密度依存性・環境変動・人口学的確率性を取り込んだ確率微分方程式の個体群モデルを構築し、資源変動の時系列データからパラメータを推定する方法を開発する。絶滅確率(絶滅リスク)を推定パラメータから計算し、資源管理の評価基準に組み込む。最終的にはスケトウダラなどの資源評価に応用することを目指している。
[成果の内容・特徴]
平成12年度から開始予定の一般別枠「太平洋漁業資源」の小課題「スケトウダラの個体群動態モデル」へ向けた基礎的な研究を進めた。
- 持続可能性の尺度である絶滅確率の概念を取り込んだ基礎的な個体群動態モデルを構築した。
- モンテカルロ法による新しい広く応用できる統計的バイアス補正法を開発した。
- 絶滅確率を介して生息地破壊や乱獲などの異なるリスクを比較する方法を開発した。
- CPUEの時系列データを用いて絶滅リスクを推定する方法を開発した。
[成果の活用面・留意点]
- 資源の持続可能性を評価することで、資源の持続的利用法の策定に資する。
- モンテ・カルロ法を用いた推定量のバイアス補正法は、これまでにない新しいものであり、様々なパラメトリックモデルに応用が可能である。生態学や資源管理のモデルでパラメータ推定を行なう場合に、バイアス補正や信頼区間の推定に有効に活用できる。
- 今後も汎用的な基礎的モデルとスケソウダラに関するある程度詳細なモデルの両側面から研究を行ない、応用に資する。
[具体的データ]
図 モデルから計算される平均絶滅時間T(絶滅確率の逆数)のパラメータ依存性
[その他]
研究課題名:環境変動の確率性を取り込んだスケトウダラの個体群動態モデル
予算区分 :経常研究費
研究期間 :平成11年度(平成11年~平成13年)
研究担当者:北海道区水産研究所 亜寒帯漁業資源部 資源評価研究室 箱山 洋
発表論文等:
- Hakoyama, H. and Iwasa, Y. 2000. Bias-Corrected Estimator and Confidence Interv-als Based on the Monte Carlo Method. Japanese Journal of Biometrics, 20,143-154.
- Hakoyama, H. and Iwasa, Y. 2000. Extinction Risk of a Density-Dependent Populat-ion Estimated from a Time Series of Population Size. Journal of Theoretical Bio-logy, 204(3),337-359.
- Hakoyama, H., Iwasa, Y. and Nakanishi, J. 2000. Comparing Risk Factors for Popu-lation Extinction. Journal of Theoretical Biology, 204(3),327-336.
- Iwasa, Y., Hakoyama, H., Nakamaru, M. and Nakanishi, J. 2000. Estimate of Popul-ation Extinction Risk and its Application to Ecological Risk Management. Popula-tion Ecology, 42/1,73-80.