国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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黒潮親潮移行域で採集されたマアナゴのレプトケファルス幼生(葉形仔魚)

[要約]
 発育初期の生態が不明であったマアナゴの葉形仔魚が黒潮親潮移行域にまで移送されていることが明らかになった。通常は,変態期にはいると考えられる全長100mmに達する個体が変態せずに黒潮親潮移行域で採集された。これらの変態すべき時期に沿岸域に到達できなかった無効分散個体である可能性が示唆された。


中央水産研究所海区水産業研究部沿岸資源研究室
連絡先    0468-56-2887
推進会議    中央ブロック
専門    資源生態
対象    他の底魚
分類    研究


[背景・ねらい]
 マアナゴはウナギと同様に発生初期に葉形仔魚(レプトケファルス幼生)と呼ばれる発育段階を持ち(図1),マアナゴの葉形仔魚は沿岸域でごく普通に採集されるが,産卵親魚の採集記録は無く,産卵場も明らかにされていない。このことから,マアナゴもウナギと同様に南方海域で産卵し,ふ化した仔魚は成長しながら黒潮等の海流により我が国周辺に運ばれ,沿岸域で変態を終えて資源に加入すると考えられている。しかし,黒潮等で移送中の葉形仔魚はまだ採集されていない。


[成果の内容・特徴]

  • マアナゴの葉形仔魚は,1999年に東北沖の黒潮親潮移行域において,中央水研生物生態部により行われた蒼鷹丸による卵稚仔調査の採集物から合計9個体が得られた(図2)。
  • 調査海域の水温及び塩分の分布から,この海域には黒潮続流から派生したと考えられる暖水塊があり,マアナゴの葉形仔魚の採集された地点は暖水塊の縁辺部に相当していた(図3)。
  • 採集されたマアナゴの葉形仔魚の全長は89.3~110.1mmの範囲にあり,平均全長は99.6mmであった。マアナゴの変態は肛門の位置が頭部の方に向かって前進してくることによって判断することができ,肛門前筋節数と全筋節数との比(PAM/TM)が0.79より少なければ変態期に相当する。本調査で採集されたマアナゴのPAM/TMはどれも0.8より大きい値をとり,変態期に相当すうる個体ではなかった(表1)。
  • 沿岸域で採集されるマアナゴの葉形仔魚は,今回蒼鷹丸によって採集された大きさの個体では変態期に相当する個体が20~30%を占めていることが多いのに(例:八代海で採集された平均全長96.5mmの33個体では9個体すなわち27%が変態期の個体であった),本調査で採集された個体に変態期のものがなかった。
  • 以上のことから,今回採集されたマアナゴ葉形仔魚は黒潮によって黒潮親潮移行域まで移送され,変態すべき時期に着底海域(沿岸域)に到達できなかった無効分散個体である可能性が示唆された。


[成果の活用面・留意点]
 本調査によって得られた葉形仔魚はいずれも黒潮親潮移行域で採集されたものであり,マアナゴの葉形仔魚が黒潮によって移送されることを明らかにするためには,今後は黒潮本流における調査が必要である。


[その他]
研究課題名:マアナゴ仔稚魚の沿岸域への加入過程における栄養生理学的特性の解明
予算区分 : 経常研究
研究期間 :平成11年度(平成11~13年)
研究担当者:黒木洋明,福田雅明,堀井豊充
発表論文等:黒潮親潮移行域でのマアナゴ葉形仔魚の出現,第3回アナゴ漁業資源研究会(平成12年1月),口頭発表