回収型生態観測技術の応用によるオットセイの摂餌生態観測
[要約]
バイオコスモス計画で開発した小型深度温度データロガーをアルゴス送信機と共にオットセイに装着し、三陸沖からカムチャッカ半島沖に至る移動経路と潜水行動を約2ヶ月間観測した。他の海産ほ乳類への応用も可能である。
遠洋水産研究所 北洋資源部 おっとせい研究室
[連絡先] 0543-34-0715
[推進会議] 遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専門] 資源生態
[対象] おっとせい
[分類] 研究
[背景・ねらい]
海洋野生生物と漁業との共存が今日的な問題としてクローズアップされているが、生物の性別・月別の分布や餌場などのきめ細かい生態情報は、 技術が発達していなかったため、これまで十分ではなかった。そこで、「農林水産系生態秩序の解明と最適制御に関する総合研究」(バイオコスモス計 画)で開発した生態観測機器を応用し、野生生物の生態観測の可能性について検討した。
[成果の内容・特徴]
- 調査に使用したデータロガーは(表1)及びアルゴス送信機(表2)は、海産ほ 乳類の生態観測に十分使用可能であることがわかった。
- 標識個体は三陸沖で越冬した後、千島列島沖を通って北上した(図1)。
- 夜間(18時00分~05時00分)よく潜るというパターンは三陸沖及び千島列島沖とも同一であったが、潜水の回数は三陸沖が千島列島沖よりも圧倒的に多く 、かつ潜水深度も三陸沖が千島列島沖より深かった。このことから、三陸沖で盛んに摂餌していることが推察された(図2 )。全追跡期間における最大潜水深度は120mであった。
[成果の活用面・留意点]
- データロガーは他の大型海洋生物にも応用が可能である。
- データロガーはロガーの回収の可能性が高い生物に用いることが必要である。回収が困難な生物については、データロガーと人工衛星送信機を同一 筐体に組み込んだ(別途開発中の)機器を使用した方がよい。
[その他]
研究課題名:鰭脚類の生物特性、索餌回遊期における生物特性の解明
予算区分 :漁業調査
研究期間 :平成5~8年度
研究担当者:馬場徳寿、清田雅史
発表論文 :Characteristics of northward migration of female northern fur seals
in the western North Pacific. Abstract of 11th Biennial Conference
on the Biology of Marine Mammals. 1995. Dec.