国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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北西太平洋におけるスジイルカの系群判別

[要約]
 北西大西洋におけるスジイルカの系群判別を、分布密度の季節変化、衛星標識、ミトコンドリアDNAを用いて試みた。その結果、我が国近海に分布するスジイルカに沿岸と沖合の2つの系群が存在することを支持する証拠は得られなかった。


遠洋水産研究所・外洋資源部・小型鯨類研究室・(外洋資源部・大型鯨類研究室)・(北洋資源部・おっとせい研究室)
[連絡先] TEL:0543-36-6054
[部会名]平成9年度遠洋漁業関係試験研究推進会議
[専 門] 資源生態
[対 象] 歯くじら
[分 類] 研究


[背景・ねらい]
 スジイルカは、我が国沿岸のいるか漁業により長年捕獲されてきているが、1970年代以降捕獲頭数の減少傾向が認められる。一方、沖合には引き続き相当数の資源の分布が知られている。この点を考慮し、国際捕鯨委員会は、我が国近海に分布する本種の系群判別の実施を勧告した。この勧告を受け、種々の方法による調査研究を実施し、沿岸と沖合に異なる系群が存在するか否かについて検討した。

  1. 目視調査による分布密度の月別変化を検討した結果、夏に北緯35度以北東経145度以東にある高密度海域は、季節が進むにつれて西に移動し、その一部は冬には我が国沿岸部に達していると考えられた(図1、2)。このことは、沖合から沿岸への回遊を示唆している。
  2. 沖合と沿岸で採取された個体のミトコンドリアDNAの塩基配列を比較したところ、有意差が検出されなかった。
  3. 和歌山県太地沖で衛星標識を装着し放流した複数の個体を追跡したところ、いずれも東方に遊泳して伊豆諸島方面に達したことがわかった(図3、4)。今後は、装着方法の改善によるさらなる追跡試験が求めれらている。

図1、2

図3、4

 

[成果の活用面・留意点]
 本成果によって、我が国近海のスジイルカに沿岸と沖合の2系群が存在することを支持する証拠は得られなかった。今後は、上記のような改善を施した新たな調査解析を行なう必要がある。


[その他]
研究課題名:重要鯨類の系群識別
予算区分 :経常
研究期間 :平成9年度(平成6~10年度)
研究担当者:加藤秀弘、宮下富夫、岩崎俊秀、吉田英可、馬場徳寿 発
表論文等 :
・Seasonal distribution changes of striped dolphins in the western North Pacific. Document SC/49/SM14 submitted to the Scientific Committee of the 49th IWC. 12pp.1997
・Satellite tracking of bottlenose dolphin (Trusiops truncatus) and striped dolphin (Stenella coeruleoalba) in adjacent waters off the Pacific coast of Japan.  Document SC/49/SM16 submitted to the Scientific Committee of the 49th IWC. 15pp.1997.
・A preliminary analysis of mitochondorial DNA in striped dolphins, off Japan. Document SC/49/SM41 submitted to the Scientific Committee of the 49th IWC. 7pp. 1997.