国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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トラフグの系群判別及び回帰特性の検証

[要約]
 アイソザイム分析、漁業実態調査等によりトラフグの系群判別を行い、その結果立てられた仮説”生まれ故郷の産卵場への回帰性”を親魚及び当歳魚の標識放流試験により直接的に検証した。


南西水産研究所・資源管理部・内海底魚資源研究室
[連絡先]  0829-55-0666
[推進会議] 南西ブロック水産業関係試験研究推進会議
[専門]     個体群生態
[対象]     ふぐ
[分類]     研究


[背景・ねらい]
 トラフグが生まれて故郷の産卵場へ回帰して産卵することが実証されるならば、サケ、マス類で行われているような放流事業によっ て資源の維持・増大をはかることができる。そこで、アイソザイム分析、漁業実態調査等による系群判別から導いた”産卵場への回帰説” の仮説を親魚及び当歳魚の標識放流によって実証する。


[成果の内容・特徴]

  1. 西条沖と福岡湾、島原海湾との標本間でPGM遺伝子頻度に有意差が認められた。これまで瀬戸内海と九州沿岸及び伊勢湾の系群の異 なることを明らかにしてきたが本研究により瀬戸内海と九州沿岸の系群が異なることをさらに確証できた(表1 )。
  2. 1994年5月中旬に広島県布刈瀬戸周辺海域でトラフグの産卵親魚104尾(平均全長42.8cm、平均体重1.53kg)を放流した結果、放流直 後~6ヶ月に周辺海域を含む瀬戸内海中西部海域で計7尾、2~10ヶ月に志布志湾、玄界灘、五島灘で計5尾、そして、1年後の産卵期 には5尾が放流地点の周辺海域のみで再捕され(図1)、外海域へ出た親魚が再び成熟して産卵場へ回帰 してきたことを実証された。
  3. 9月に布刈瀬戸周辺海域で放流したトラフグ当歳魚は、放流3ヶ月以降に瀬戸内海西部海域及び五島灘等で再捕された( 図2)。さらに人工種苗の当歳魚1尾が20ヶ月後に放流地点の周辺海域で再捕され、当歳魚の標識放流試験からもトラフグが生まれ 故郷の産卵場へ回帰することが明らかにされた。

表1  

 図1図2

 

[成果の活用面・留意点]
 本研究の結果は、トラフグの各産卵場の発生群が各々の系群を形成し、未成魚期には外海域で混合はするものの、成熟すると生まれ故 郷へ回帰することを示唆し、サケ・マス類で行われているような資源増大事業へ発展できる。


[その他]
研究課題名:トラフグの系群判別及び回帰特性の検証
予算区分 :特別研究
研究期間 :平成7年度(平成6~8年)
研究担当者:佐藤良三・柴田玲奈
発表論文 :瀬戸内海のトラフグ資源の現状、瀬戸内海、4号、1995
      布刈瀬戸周辺からのトラフグ当歳魚の移動、南西水研報、29号、1996