沿岸表層水温の変動特性に関する調査研究
[要約]
山口県日本海側に点在する定置網に記憶式水温計を取り付け、表層水温の連続観測を実施することにより、本県日本海側の表層水温の変動特性および表層水温変動と漁業生産の関係を明らかにした。
山口県水産研究センター 外海研究部 資源増殖グループ
[連絡先]0837(26)0711
[推進会議]日本海ブロック
[専門]海洋構造
[対象]海洋構造
[分類]調査
[背景・ねらい]
近年、漁業資源の減少に伴い、山口県外海沿岸域の定置網に入網する主要な魚類(ブリ類、イカ類)も減少しており、定置網漁業者をとりまく経営環境は厳しいものとなっている。昔から漁業者の間では、定置網漁獲量には間欠性や伝播性があると言われているが、これらの特性を対馬海流の変動に関連しているものと考え、記憶式水温計を定置網に取り付け表層水温の長期連続観測を実施することにより、当該海域での海洋環境の変動特性を把握し、漁業生産との関連を明らかにすることを目的とした。なお、水温観測手法、資料解析については九州大学応用力学研究所 千手智晴助教授の指導を受けている。
[成果の内容・特徴]
記憶式水温計を取り付けた定置網の位置(6箇所)を図1に、表層水温観測結果の一例(川尻地区の結果)を図2に示す。記憶式水温計で得られた水温と定置網漁獲量の資料解析から、次のことが明らかとなった。
- 冬季・夏季の表層水温の変動周期は、2~3日周期と6~9日周期が卓越する(図3)。
- 変動の位相関係から、6~9日周期変動については、山口県の西側から東側に変動が伝播している。
- 定置網の漁獲量も数日から数週間の周期変動が存在していることが示唆され、ケンサキイカについては5~8日周期の変動がみられ、これは水温の変動周期と対応している様子がうかがえる。漁獲量資料の詳細は解析中である。
[成果の活用面・利用面]
関係漁業者に水温情報を迅速に提供するとともに、当水産研究センターが主催する県内定置網漁業者会議などの場において、水温解析結果を提供している。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:外海管理技術開発調査事業(県単事業)
研究期間 :平成13年度(平成10年~継続)
研究担当者:繁永裕司、渡辺俊輝(水産研究センター)、千手智晴(九州大学)
発表論文等:台風によって引き起こされた山陰沿岸水温の急低下現象、千手・渡辺、海と空、75(1)、1999
対馬海峡蓋井島で観測された内部潮汐の特徴、千手・渡辺、沿岸海洋研究、37(1)、1999