国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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養殖用トラフグ種苗の量産技術

[要約]
 トラフグの早期採卵技術の開発により、若狭湾での産卵時期より約2カ月早い3月上旬に採卵し、種苗生産を行うことが可能となった。さらに、量産技術の推進を図り、平成11年度から、県内養殖漁業者へトラフグ種苗の供給を開始した。


福井県栽培漁業センター
[連絡先]0770-53-1249
[推進会議]日本海ブロック
[専門]飼育
[対象]ふぐ
[分類]研究


[背景・ねらい]
 福井県若狭湾沿岸で「若狭ふぐ」としてトラフグの養殖が盛んである。トラフグ養殖に用いられる種苗はこれまで全て県外で生産されたものであり、その搬入は、長距離運搬による弊害や生産地と県内地先水温の格差などのリスクがあった。このため、養殖漁業者からは地元での種苗供給が求められていた。そこで、当センターでは、平成11年度から養殖用トラフグ種苗の量産化を行い,県内養殖漁業者へ供給を始めた。


[成果の内容・特徴]

  1. 春に若狭湾沿岸で漁獲された天然親魚を養成し、電照処理と加温飼育、HCGの投与により若狭湾における天然魚の産卵時期に比べて約2カ月早い3月上旬に採卵することが可能となった。
  2. 種苗生産は全長50mmサイズでまでとし、途中30mmサイズで一旦取り揚げ、全長選別、密度調整後、再収容し50mmまで飼育した。
  3. 30mmサイズまでの飼育は、水温を22℃とし、約40日で30mmに達した。この間の生産率は30~50%であった(表1)。
  4. 全長選別には、スリット付き選別箱を用いて行った。この際、稚魚の全長と後頭幅長の関係からスリット幅を選定することによって、選別サイズを推定することが可能であった(図1、図2)。
  5. 30mm以降の飼育においては、選別によりサイズを揃えたこと、また飼育密度を400尾/m3に調整したことによって、噛み合いによる魚体の損傷を最小限とすることができた。また、この間の生残率は90%であった(表2)。
  6. このようにして、1999年に3.25万尾、2000年に3.0万尾、2001年には4.0万尾の養殖用トラフグ種苗を供給した。


[成果の活用面・留意点]
 トラフグ種苗の量産・供給により、県外からの種苗搬入に伴うリスクを回避することが可能となる。また、若狭生まれで若狭育ちの生粋の「若狭ふぐ」として一層のブランドの定着が期待される。今後は、さらに優良な形質を有する生産技術を検討していく必要がある。


[具体的データ]

表1

図1
図2


表2
 


[その他]
研究課題名:トラフグ養殖種苗生産事業(県単事業)
研究期間:平成13年度(平成11年度~継続)
研究担当者:福井県栽培漁業センター 矢野由晶・大江秀彦
発表論文等:なし