山陰・北陸海域におけるアカガレイの分布
[要約]
2001年に山陰・北陸海域で着底トロールによる試験操業を行ない、当海域におけるアカガレイの分布様式を調査した。その結果、当海域におけるアカガレイの成育場が能登半島周辺から若狭湾にかけての海域であることが明らかとなった。また、成長・成熟にともなう西方への移動が想定された。
日本海区水産研究所日本海漁業資源部資源生態研究室
[連絡先]025-228-0569
[推進会議]日本海ブロック
[専門]資源生態
[対象]かれい
[分類]研究
[背景・ねらい]
山陰・北陸海域(石川県~島根県沖)においてアカガレイは、ズワイガニ、ハタハタとならぶ底びき網漁業の主要対象魚種であり、年間約3,000トンが漁獲されている。近年、当海域のアカガレイの資源管理、保護の必要性が高まっているものの、分布、移動、回遊などの資源構造に関する知見は乏しく、資源の実態が把握できない状況にあった。そこで、2001年6~8月に、石川県から島根県沖の水深200~500mの海域に157定点を設け、着底トロールによる試験操業を行い、採集されたアカガレイの体長組成を調べ、この海域における分布様式を明らかにし、当海域の資源構造について考察した。
[成果の内容・特徴]
- 能登半島周辺海域(能登沖、加賀沖)には、雌雄ともに未成魚が多く分布し、雌では30 cm以上の大型個体はほとんど出現しなかった。若狭湾周辺(若狭沖)では未成魚とともに成魚も多く分布しており、雌の30 cmを越える個体も多く出現した。一方、兵庫県沖(但馬沖)では、採集個体に占める未成魚の割合は減り、鳥取県沖や隠岐諸島周辺海域(隠岐周辺、隠岐北方)では、未成魚は分布せず、採集された個体はほとんどが大型の成魚であった(図1)。
- 未成魚が多く分布していたことから、能登半島から若狭湾周辺海域が山陰・北陸海域におけるアカガレイの成育場であることが明らかとなった(図2)。
- 能登半島周辺から西方に向かうにつれて、採集物に占める大型個体(成魚)の割合が高くなっていくことから、成長・成熟にともなう西方への移動が想定された(図2)。
[成果の活用面・留意点]
今回得られた結果は、当海域のアカガレイ資源の管理・保護をする際の重要な基礎情報となる。この知見を基に、今後は標識放流などで移動経路を解明するとともに、産卵場を特定し、加入機構を解明することによって、当海域におけるアカガレイ資源構造が明確になる。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ズワイガニ等主要底生魚介類の分布様式と成長、成熟過程の把握(経常研究)
研究期間:平成13年度(平成13~17年)
研究担当者:廣瀬太郎 資源生態研究室
発表論文等:平成14年度日本水産学会大会で発表予定