イワガキの天然採苗適期予測技術の開発
[要約]
戸賀湾において漁業者によるイワガキの天然採苗が実施されるようになった。このことから、産卵盛期の推定と浮遊幼生の出現量を調査し、採苗適期を予測して、採苗器の投入日を指導している。現在のところ、予測どおり実際に稚貝の付着が認められており、今後は予測手法を漁業者へ指導していく。
秋田県水産振興センター 資源増殖部・企画管理部普及班
[連絡先]0185-27-3003
[推進会議]日本海ブロック
[専門]増養殖技術
[対象]かき
[分類]普及
[背景・ねらい]
イワガキの天然採苗及び養殖技術が開発されたことにより、男鹿市戸賀湾では平成11年からイワガキ養殖が行われるようになった。
また、近年全国各地でイワガキの養殖化が進められており、種苗の需要が拡大していることから、販売を目的とした種苗生産への気運が高まっている。
そこで、天然採苗するに当たって、採苗適期を予測し、それを漁業者に提供することで、リスクの軽減を図ることとした。将来的には、採苗適期予測を漁業者自身が行えるよう指導を行っていく。
[成果の内容・特徴]
1.採苗適期予測
8~9月に天然イワガキの生殖巣指数を調査して産卵盛期を推定する。そして、浮遊期間である3週間から1か月後を付着盛期と予測し、これを採苗適期として漁業者に広報する。産卵盛期確認後は、浮遊幼生の出現量を調査し、予測した採苗適期を精査する。
(平成12年の結果)
生殖巣指数は雌雄とも、8月21日には30~60%と高い値であったが、9月12日には5~25%と低い値を示し、この期間内に産卵盛期があったと推定した。したがって、付着盛期は9月下旬から10月上旬と予測した。
カキ型幼生の出現量については、産卵盛期の直後の9月12日に約1,600個体/m3と大量に出現した。また、殻高250μm以上の付着直前の個体が、10月12日に83.3個体/m3出現した。
2.採苗器の投入
採苗器は、殻高10cm前後のホタテ殻50枚を15~20mmの間隔で連結したものを1連とした。沖出しは、水深1mの位置に水平に張った幹縄に約2m間隔で採苗器を1連ずつ垂下した。
(平成12年の結果)
10月3日に58連(2,900枚)の採苗器を設置した。11月9日に基質を5枚回収して稚貝の付着数を測定したところ、平均75個(表面平均70.6個、裏面平均4.4個)の付着となっていた。
[成果の活用面・留意点]
イワガキの天然採苗は、人工採苗に比べコストが低く、労力もかからないが、天然の再生産力に依存するため、地理的な条件に大きく左右される。この点においては、恵まれた環境といえる戸賀湾であるが、イワガキ種苗の供給基地としての活用を検討した場合、直径2km足らずと狭い上、湾内は船の航路、ワカメ・魚類などの養殖場もあり、供給量には限界があると考えられる。
また、天然採苗は付着時期が限定される上、やり直しがきかないことから、生物学的データのモニタリング調査が不可欠である。今後、採苗適期予測手法をマニュアル化し、漁業者自身が実施できるように指導を行う必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:日本海海域におけるイワガキの養殖手法の開発(国補助事業)
研究期間:平成13年度(平成12~14年度)
研究担当者:秋田県水産振興センター 資源増殖部 三浦信昭・企画管理部普及班 山田潤一
発表論文:平成12年度先端技術等地域実用化研究促進事業報告書(2001)
平成12年度秋田県青年・女性漁業者交流大会資料(2001)