日本海におけるホタルイカ卵の分布
[要約]
日本海におけるホタルイカの主産卵海域は,朝鮮半島南東岸~能登半島西岸であることが分かった。卵出現量の峰が見られた6海域のうち,富山湾の出現密度は低かったが,年変動は相対的に小さかった。
富山県水産試験場 漁業資源課
[連絡先]076-475-0036
[推進会議]日本海ブロック
[専門]資源生態
[対象]他のイカ類
[分類]研究
[背景・ねらい]
富山湾のホタルイカ資源は従来独立した系群と考えられていたが,最近の研究で富山湾以外の資源との関連が示唆されている。そこで,卵稚仔調査結果を用い,日本海におけるホタルイカ卵の分布実態の詳細な把握を試みた。
[成果の内容・特徴]
緯経度20分区画毎に平均した,1991~2000年平均の卵出現密度を見ると,日本海におけるホタルイカ卵は,3月には朝鮮半島南東岸~新潟沿岸,4~6月は朝鮮半島南東岸~津軽半島東岸に至る本州沿いの沖合最大幅約120マイルの範囲に出現していた。ホタルイカ卵の分布は,東西方向では能登半島を境に西で著しく密度が高く東で低い「西高東低型」を示した。また南北ないし沿岸・沖合方向の密度は,陸棚上では低いか,高くても年変動が大きく,陸棚縁辺部~やや深い海域では高い上に年変動が小さく,さらに北ほど低く年変動が大きい傾向があった。
出現密度の峰は,対馬北東方,隠岐群島西方,同東方,経ヶ岬北方~若狭湾北方,富山湾および佐渡島南~東の6海域にみられ,経ヶ岬北方~若狭湾北方の海域では,出現密度が高く年変動が小さかった。また,対馬北方の独立性が高く,富山湾は出現密度が低かったが,年変動は小さかった。
出現密度は全般的に,3~5月に増大し5~6月に低下した。ただし,隠岐群島東では6月の低下度合いが大きく,佐渡島近海では6月の出現密度が最も高かった。東西ないし沿岸・沖合方向の出現範囲は,3~5月に拡大し5~6月に縮小した。
[成果の活用面・留意点]
日本海のホタルイカ資源構造を把握する際の基礎的な情報が得られた。今後出現密度の峰が見られた海域毎の,出現量の経年変動を検討し,変動傾向から見た資源構造を明らかにする必要がある。そして,富山湾と他海域の関係が明らかになることで,富山湾の漁獲量変動の予測や原因解明に寄与することが期待される。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:資源評価調査委託事業(独立行政法人水産総合研究センターからの委託事業)
研究期間:平成13年度(平成3~12年)
研究担当者:富山県水産試験場 漁業資源課 内山 勇
発表論文:なし