キジハタの種苗生産について
[要約]
キジハタの親魚養成では,淡水浴により寄生虫によるへい死を防止することができ,ある程度の採卵数が確保できるようになった。種苗生産では,水槽の容積別飼育や油の添加と除去を行った飼育試験により,千尾単位の生産が可能となった。また,飼育水温は25℃以上が望ましいことがわかった
富山県水産試験場 栽培・深層水課
[連絡先]076-475-0036
[推進会議]日本海ブロック
[専門]飼育環境
[対象]他の底魚
[分類]研究
[背景・ねらい]
キジハタEpinephelus akaaraは,スズキ目,ハタ科,マハタ属に分類され,全長50cm程度に成長する。本種は本州中部以南,さらに韓国,中国やインド方面まで広く分布し,岩礁地帯に生息する。富山県氷見市ではナメラまたはヨネズ,魚津市ではアカラと呼称され,美味であることから市場価格が高い。漁業者から本種の資源増大が望まれており,本県の新しい栽培漁業対象種としての可能性を探るため,大量の種苗を生産できるか検討した。
[成果の内容・特徴]
(1)親魚養成および採卵
寄生虫によるへい死を防止するために,親魚の摂餌が悪くなった時点で30分から2時間の淡水浴を繰り返すことにより,ある程度の採卵数(平成12年1,216.0万粒,平成13年1,148.7万粒)が確保できるようになった。
(2)種苗生産
- 平成11年に水槽の容積別の種苗生産試験を実施した結果,1m3および2m3水槽では生産できず,4m3水槽で16尾,7m3水槽で432尾の生産であったことから,種苗生産にはある程度の大きな水槽が必要であることがわかった。
- 平成12年には,ふ化仔魚自身が分泌する粘液による浮上へい死を防ぐため,飼育当初に油を添加し,その後油膜の除去を行い,中型の7m3水槽と35m3水槽で種苗生産試験を実施した結果,7m3水槽1,421尾,35m3水槽2,546尾の合計3,967尾を生産することができた。
- 平成13年では7m3水槽3面で種苗生産試験を実施したが,7月下旬に開始した水槽では成長は順調に推移し,取り揚げ時(日齢50日)全長35.9mm(生産尾数375尾)であったのに対し,8月中旬に開始した2面の水槽では成長が途中より悪くなり,飼育期間が15日も長かったにもかかわらず, 取り揚げ時(日齢65日)全長31.9mm(生産尾数102尾)と全長28.3mm(生産尾数412尾)で小さかった。飼育平均水温をみると,7月下旬開始では25.9℃であったのに対し,8月中旬開始では24.4℃と24.1℃であったことから,飼育水温は25℃以上が望ましいことが分かった。
[成果の活用面・留意点]
キジハタの種苗生産は,良質卵を得て飼育初期の減耗を少なくし,生物餌料から配合飼料に早く切り替えることによって,万単位の生産が可能となる。初期減耗の抑止,適性餌料の投与時期の検討,適性飼育条件の把握,共食いの防止対策,ウイルス性神経壊死症の防除が必要である。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:新栽培漁業対象種開発研究(県単)
研究期間:平成13年度(平成5~13年度)
研究担当者:堀田和夫*1,宮崎統五*2,渡辺孝之*1
(*1:富山県水産試験場栽培・深層水課,*2:富山県栽培漁業センタ-)
発表論文等:なし