青森県小泊村沿岸域におけるウスメバル未成魚の分布及び移動
[要約]
小泊村沖で刺網試験を周年実施した。調査海域周辺のウスメバルは、1,2歳魚期を水深50~70m付近ですごした後に、漁獲の主体となる3歳魚以上の主分布域である水深100~150mへ移動すること、そして移動のきっかけとして秋季の高水温からの逃避が考えられた。
青森県水産試験場 漁業開発部
[連絡先]0173-72-2171
[推進会議]日本海ブロック
[専門]資源生態
[対象]他の底魚
[分類]研究
[背景・ねらい]
ウスメバルは日本海北部を代表する岩礁域に生息する魚種であり、青森県では主として一本釣や刺網により漁獲され、市場単価が高いことから沿岸漁業での重要な漁獲対象種となっている。本種は、流れ藻に付随する稚魚として知られているが、流れ藻から離れた後の生息環境については、涌坪・田村(1983)や池原(1989)により若干報告されてはいるものの、未成魚期の生活様式についてはいまだ不明な点が多く残されている。今回は、小泊村の沿岸域で実施した刺網(三枚網)調査で、未成魚期のウスメバルの分布に関して若干の知見を得た。
[成果の内容・特徴]
- 調査期間中に採集した魚類51種2,286個体のうち、ウスメバルが1,223尾ともっとも多く漁獲された。
- ウスメバル平均漁獲尾数は、7~9月の間は20~40尾/回を示していたが、10~12月にかけて10尾/回以下に激減した後、1月以降再び増加し6月では最高の109.5尾/回を示した。
- 体長組成から各年齢ごとの正規分布に分解した結果から、調査海域でのウスメバルの分布は1,2歳魚が中心であることが示された。
- 春季に産仔されたと考えられる0歳魚は、翌年の2月以降調査海域に出現した。
- 調査海域周辺のウスメバルは、1,2歳魚期を水深50~70m付近ですごした後、漁獲の主体となる3歳魚以上の主分布域である水深100~150mへ移動すると考えられた。
- 1,2歳魚が深場へ移動する要因の1つとして、秋季の高水温からの逃避がきっかけになっていると考えられた。
- ウスメバルの好適水温帯は9~16℃前後と考えられた。
[成果の活用面・留意点]
- ウスメバルの資源管理計画を策定する際の基本資料としての活用。
- 本種を主対象種として実施される増殖場造成事業において、設置場所・礁体種類・設置水深等の決定の際の資料としての活用。
- 底生生活移行後から水深50~70mに出現するまでの0歳魚の生態については依然として不明のままである。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:メバル類の資源生態の解明と管理技術開発(補助事業)
研究期間:平成13年度(平成8~12年)
研究担当者:菊谷尚久 漁業開発部
発表論文:水産試験場研究報告、第2号(平成14年刊行予定)