コナガニシ(あかにし)種苗生産技術試験
[要約]
コナガニシの産卵期は5月下旬~7月上旬であり、母貝1個体あたり約40個の卵嚢が得られた。産卵直後の卵嚢1個に含まれる受精卵数は約160個だったが、5週間後の孵出稚貝数は1割弱の約12個であり、残りの卵は発生が停止し、稚貝にまで成長する幼生の栄養源となることが分かった。
石川県水産総合センター 技術開発部
0768-62-1324
[推進会議]日本海ブロック
[専門]飼育環境
[対象]他の巻貝
[分類]研究
[背景・ねらい]
コナガニシFusinus perplexus minor(地方名:あかにし)は、水深20m以浅の砂泥域に生息するイトマキボラ科の巻貝で、石川県では主に七尾湾において刺し網やけた網などで周年漁獲されている。主に刺し身や寿司だねとして食されるが、近年漁獲量の減少により価格が高騰しており、時にはkgあたり1万円を超えることもある。このため、種苗放流あるいは養殖による資源量の増大を目指し、種苗生産技術開発のための生態的な基礎知見を集積する。
[成果の内容・特徴]
- 天然母貝を室内水槽に収容し自然海水で飼育した結果、水温約17℃となる5月下旬より産卵を開始し、6月中旬をピークとして、7月上旬まで産卵が観察された。七尾湾での潜水調査でも同時期に産卵が確認された。(図1)
- 母貝1個体あたり約40個の卵嚢を産み付けた。1つの卵嚢に含まれる受精卵数は卵嚢によって大きく異なり、平均では約160個だった。(図2)
- 稚貝の孵出まで常温海水で約5週間を要し、1卵嚢あたりの孵出稚貝数は産卵された受精卵のうち1割弱に相当する約12個だった。残りの卵は卵嚢内で発生の進行が停止し、稚貝にまで成長する幼生の栄養源となっていることが分かった。(図3、4)
- 孵出した稚貝は肉食性であり、スルメイカ・サバ・アミエビのミンチを単独あるいは混合投与することで飼育が可能だった。しかし餌料の違いによる成長差は確認できず、平均殻高は1年間で約8mm、2年間で約18mmに留まった。
[成果の活用面・留意点]
コナガニシの産卵生態を把握し、初期孵出稚貝の確保は可能となった。しかし、適正な初期餌料が解明できないこともあり、十分な成長は見られなかった。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:アカニシ種苗生産技術開発事業(県単事業)
研究期間 :平成13年度(平成10~13年度)
研究担当者:田中正隆、浜田幸栄、沢矢隆之、戒田典久(技術開発部)
発表論文等:なし