二枚貝幼生の餌料となる微小植物プランクトンの増殖要因
愛知県水産試験場 漁業生産研究所 栽培漁業研究室
[連絡先]0569-65-0611
[推進会議]中央ブロック
[専門]物質循環
[研究対象]植物プランクトン
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- アサリ等二枚貝の浮遊幼生は、成貝に比べ微小な植物プランクトンしか摂餌できない。そこで、幼生にとって好適である、微小植物プランクトン(粒径10μm以下の小型画分)が豊富に存在する環境が成立する条件を、河川から流入する栄養物質の負荷量の変動との関係から探った。
- (1)大型画分のクロロフィル量は、観測日前10日間の積算栄養塩負荷量との相関が小さかったことから、大型植物プランクトンは、河川からの栄養塩負荷に依存せずに発生すると考えられた。
- (2)小型画分のクロロフィル量は、これらの要因との間に強い相関がみられ、負荷量が小さい期間にはほとんど検出されなかったことから、微小植物プランクトンの発生量は、河川からの負荷に直接的に依存し、十分な増殖を得るには大規模な出水が必要であることが示された。
[成果の活用面等]
- 二枚貝幼生の生残を支える微小植物プランクトンは、河川の大出水時に限って増殖することが明らかになったので、二枚貝の増殖を図る上で、海域環境の維持や改善だけではなく、河川管理が同じく重要であると考えられ、総合的な水域管理指針を策定する上で参考にしていく。
[具体的データ]
図 各観測日におけるサイズ別クロロフィルa濃度と、観測日前10日間の矢作川からの積算DTN,DTP負荷量の関係(知多湾湾央表層:2000年6月~2002年5月)