”魚のゆりかご水田”復活に向けて
滋賀県水産試験場 栽培技術担当
[連絡先]0749-28-1611
[推進会議]内水面
[専門]生態系
[研究対象]淡水魚
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 魚類の繁殖の場としての機能をほ場整備後の水田地帯に取り戻すために必要な知見の蓄積と技術を開発する。
- (1)農業用排水路の階段式堰上げ工により、水田と排水路間の水位差を縮小できた。
- (2)魚道機能をもつ水田排水桝を試作し、その機能を確認した。
- (3)現行の水田が持つ魚類の産卵繁殖の場としての潜在的な能力を確認した。
[成果の活用面等]
- ほ場整備後の水田地帯における魚類の移動経路を簡易にかつ低コストに確保する手法のひとつとして有効であろう。
[具体的データ]
写真1: ほ場整備後の水田地帯において、階段式堰上げ工(落差約10cm×数段)を支線排水路に設置し、魚類の遡上・産卵状況を調査した。ニゴロブナ、ギンブナ、コイ、ナマズ等が遡上・産卵し、当方法は水田と排水路の水位差を緩和する上で有効であることが確認された。
写真2: 遡上行動中のニゴロブナ親魚.実験池にてニゴロブナの産卵遡上実験を実施した。ニゴロブナは落差10cm×数段の「魚道排水桝」を産卵のため遡上した。なお、遡上成績は通水量やプールサイズにより影響を受けた。
写真3: 実際の稲作水田に「魚道排水桝」を設置し、魚類の遡上と水田内での繁殖状況を調査した。ナマズ成魚とフナ成魚の遡上を確認し、水田内ではナマズ、フナ、ドジョウの仔稚魚が多数確認された。
写真4: 水田で産卵するニゴロブナ.田植え後の水田にニゴロブナ親魚を放流して「中干し」までの状況を追跡した。産卵は水田内の広範囲で行われ、降雨時に自然流下した稚魚は34,000尾、中干し時(ふ化後35日)の稚魚数は49,000尾(16.2±1.8mm)と推定され、合計仔稚魚数は推定産卵数(146,000粒)の57%にあたり、水田のもつ潜在的な魚類育成機能の高さが示された。