山形県鼠ヶ関川におけるアユの減耗過程
中央水産研究所内水面利用部
[連絡先]0268-22-1487
[推進会議]内水面
[専門]資源・漁場管理
[研究対象]アユ
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 鼠ヶ関川におけるアユの漁場加入、産卵、孵化および海域への加入の各生活史段階における生息尾数を調べた。同川の河口から4km(川幅10m)の調査区間には1km毎に4つの堰堤(第1、2、3および4)があり、第4堰堤ではアユは遡上できない。
- (1)2000年4-10月に流程4kmを潜水目視(幅2m)して個体数および体長を測定した。体長体重関係から目視個体の体重を算出した。
- (2)アユは5月2日に遡上し始め、目視した面積(8000m2)あたりの個体数は5月に34000個体でその後10月まで指数的に減少した(図1)。個体密度は第2堰堤下流2kmが上流2kmより高く、5-6月には7-9尾/ m2に達した。6-8月のアユ最大成長率は0.034/日、環境収容力は67g/m2であった(図2)。10月11日に産卵を確認した。
- (3)鼠ヶ関川では少なくとも17万尾のアユが遡上し、10 月には11%が生き残って19445尾が産卵に加入し、うちメス親9723尾(205kg)が産卵したと推定される。親は体重1gあたり642個の卵をもつので卵生産量13161万粒を算出した。流量密度法で求めた10-11月の降下仔魚数は2800万尾であり、卵から仔魚降海までの生き残りは21%と推定される。
- ・(4)孵化率は60%、剥離流下卵は2.5%、カビ感染卵は0.3%、産卵場から河口まで降下中の仔魚生残率は62%であった(図3)。親魚37%の胃から平均9個 (0-82個)の卵が発見された。親がすべて産卵した(産卵率100%)とすれば、卵から仔魚降海までの生残率は21%=産卵率100%×卵期生残率34%×仔魚生残率62%で表される。卵期生残率34%=孵化率60%×着卵率97.5%×カビ非感染率99.7%×他の要因により低下した生残率(58%)で表された。他の減耗要因はおそらく親魚の卵食であろうと推定される。
[成果の活用面等]
- 河川でのアユ減耗過程を明らかにすることは、放流魚と天然魚の競争や適正密度、再生産関係を考慮して資源管理方策を策定するための重要な資料となる。
[具体的データ]
図1 鼠ヶ関川4km区間におけるアユの生息尾数(左)と区間別生息密度(右)
図2 鼠ヶ関川におけるアユの環境収容力
図3 200m降る間の仔魚の生き残り