内分泌かく乱物質が淡水魚類の繁殖形質に及ぼす影響の解明
独立行政法人水産総合研究センター中央水産研究所 内水面利用部漁場環境研究室
[連絡先]0268-22-0594
[推進会議]内水面
[専門]漁場環境
[研究対象]淡水魚
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 我が国の内水面において検出される内分泌かく乱物質(環境ホルモン)について、影響実態調査と暴露試験を行い、繁殖形質への影響を明らかにし、淡水生態系への影響予測とリスク評価を行う。
- (1)コイで血中ヴィテロジェニン(卵黄タンパクの前駆体、Vg)量に季節性が認められた。ウグイでは雌において血中Vg量と血中エストラジオール(女性ホルモン様物質の一種)量との相関が認められたが、雄では認められなかった。
- (2)下水処理場で採集したウグイでは、血中Vg量が他に比べて約10倍高いが、異常な生殖腺組織は観察されなかった。
- (3)採取した河川水にエストロン、エチニルエストラジオール(EE2)や4-t-オクチフェノール(いずれも女性ホルモン様物質の一種)などが検出された。
- (4)飼育下のウグイの血中Vg量は天然域のものに比べ高いが、餌料中の大豆の影響は認められなかった。メダカ親魚へのEE2暴露実験において、100ng/L以上のEE2濃度ではメダカの産卵が阻害された。血中EE2濃度は飼育水中のEE2量と同程度であったが、暴露終了後速やかに血中から消失した。雌雄ともに生殖腺に異常な組織像が認められた。濃度依存的に産卵への影響があり、仔魚までの発生率が低下し、子世代の生殖腺に精巣卵が形成された。
- (5)以上の結果から、現時点では内分泌かく乱物質が調査水域の水産生物に危機的な異常をもたらしている可能性は低いことが示唆された。
[成果の活用面等]
- 現時点での汚染状況と影響を明らかにすると共に、暴露実験結果により汚染時の影響を予測し、将来の汚染進行時の基礎資料とする。
[具体的データ]