ミヤコタナゴ野生集団と飼育集団の遺伝的多様性に関する研究
栃木県水産試験場 水産技術部 養殖研究室
奈良女子大学 理学部 生物科学科
[連絡先]0287-98-2888
[推進会議]内水面
[専門]水産遺伝育種
[研究対象]他の淡水魚
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 【背景・ねらい】ミヤコタナゴの種保存に対する取り組みの一つとして,各地の水族館,博物館,水産試験場等で飼育・繁殖が行われているが,水槽内での継代飼育では,遺伝的多様性の低下や遺伝子組成の変化,ひいては形質の変化の起こる可能性が高いと指摘されており,集団の遺伝的多様性の確認を行い,多様性の維持が可能な繁殖方法を確立することが課題となっている。
- 【成果】ミヤコタナゴの1つの野生集団および3つの飼育集団について、ミトコンドリアDNAシトクロームb遺伝子後半部および調節領域前半部の合わせて1114bpの塩基配列を決定したところ、9つのハプロタイプが認められ,各集団,各年級群の遺伝的多様性が明らかになった(表1,2)。年級群間でハプロタイプ頻度を比較したところ,県南飼育集団および水試系飼育集団において有意な差異が認められた。県南飼育集団の99年級群および水試系集団の98年級群では多様性が特に低下しており,飼育集団では年によって遺伝的多様性が低下することが明らかになった(表2)。しかし、遺伝的多様性が経年的に低下する傾向は認められず,このことは,高齢の年級群を含めた複数の年級群の親魚から毎年稚魚を得てきたことによると考えられた。
[成果の活用面等]
- 複数の親魚を用いて稚魚を得る飼育繁殖方法がミヤコタナゴの遺伝的多様性の維持に有効な方法であると考えられる。
[具体的データ]
表1 ミヤコタナゴのミトコンドリアDNAシトクロームb領域および調節領域で認められたハプロタイプと多型的塩基座
表2 ミヤコタナゴ各集団/年級群のハプロタイプ頻度,ハプロタイプ多様度 (h),塩基多様度 (π).
[その他]
発表論文等: Kubota H and Watanabe K (2003) Genetic diversity in wild and reared populations of the Japanese bitterling, Tanakia tanago (Cyprinidae). Ichthyol Res 50(2), 123-128.