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2025(R07). 5.21 関東地方の太平洋沿岸で新種のノリを発見、クロシオアマノリと命名~温暖化対策に向けてノリの育種素材として利用~

令和 7 年 5月21日

国立大学法人 東京海洋大学

国立研究開発法人 水産研究・教育機構

千葉県立中央博物館

北里大学

 

関東地方の太平洋沿岸で新種のノリを発見、クロシオアマノリと命名

~温暖化対策に向けてノリの育種素材として利用~

ポイント

  • 関東地方太平洋沿岸でオニアマノリとされてきた野生ノリが新種であることを明らかにした。
  • 東シナ海から日本海の沿岸に生育するオニアマノリには大きく2系統に遺伝的分化していることを明らかにした。
  • 新種クロシオアマノリとオニアマノリは、今後、温暖化に対応した新たなノリ栽培種を育成するため、育種素材として利用されることが期待される。

研究概要

 国立大学法人東京海洋大学の松下桜子博士前期課程学生と二羽恭介教授を中心とするグループは、水産研究・教育機構 水産技術研究所、千葉県立中央博物館分館 海の博物館、北里大学との共同研究により、関東地方太平洋沿岸(神奈川県江の島、房総半島南端の千葉県白浜、東京都の伊豆諸島など)でオニアマノリとされてきた野生ノリが新種であることを明らかにし、クロシオアマノリと命名しました。

 近年、ノリの色落ち*1 被害に加えて、温暖化による海水温の上昇により、日本のノリの生産量は減少しています。また、現在のノリ養殖株のほとんどは北方種スサビノリの一品種であるナラワスサビノリになっており、遺伝的画一化*2 も進んでいます。そのため、温暖化に対応した新たなノリ栽培種の育成に向けて南方系野生ノリを収集し、育種素材として利用していくことが重要です。

 本研究では、スサビノリと比較して南方に生育するオニアマノリ Pyropia dentata に着目し、日本各地でオニアマノリとされてきたサンプルを収集して、分子系統解析と形態観察を行いました。その結果、江の島、房総半島、伊豆諸島など太平洋沿岸でオニアマノリとされてきた野生ノリが新種であることを明らかにし、クロシオアマノリ Pyropia neodentata と命名しました。また、オニアマノリは、(1)日本海沿岸に広く分布する系統、(2)東シナ海と日本海南西部の一部に分布する系統の大きく二系統に遺伝的分化していることも明らかにしました。

 新種クロシオアマノリとオニアマノリには大きく生長する葉状体も見られることから、今後、温暖化に対応した新たなノリ栽培種の育成に向けて、育種素材として利用されることが期待されます。

 本研究成果は、2025 年 5 月 6 日に日本藻類学会誌「Phycological Research」のオンライン版で公開されました。

 

注釈

*1 色落ち:

陸域からの栄養塩供給の減少や植物プランクトンによる栄養塩消費により、ノリの光合成色素のもととなる海水中の溶存無機態窒素などが減少することで引き起こされる現象。

*2 遺伝的画一化:

過度な選抜育種などによって特定の品種や遺伝子の均一性が進行する現象。生物多様性が喪失され、病気や環境変化への耐性がなくなるなど脆弱性をはらんでいます。

 

 詳細資料(PDF:1,582KB)

お問い合わせ先

(研究に関すること)

東京海洋大学 学術研究院 教授 二羽恭介

E-mail: kniwa00@kaiyodai.ac.jp

(取材に関すること) 

東京海洋大学 総務部 総務課 広報室

Tel: 03-5463-1609/E-mail: so-koho@o.kaiyodai.ac.jp

国立研究開発法人 水産研究・教育機構 本部経営企画部 広報課

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