国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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ミジンコの大量培養システムを開発

[要約]
 淡水魚の主要な餌料生物であるミジンコを、100~1,000リットルの小規模タンクで、周年かつ安定的に増殖できる大量培養システムを開発した。


福岡県水産海洋技術センター内水面研究所
[連絡先]0946-52-3218
[推進会議]内水面
[専門]増養殖技術
[対象]動物プランクトン
[分類]普及


[背景・ねらい]
 ミジンコ(主要種タマミジンコMoina macrocopa)は淡水魚生産の大切な生物餌料として古くから用いられている。しかし、これまでの施肥培養や簡単な給餌培養では、ミジンコの増殖の時期や量が安定しておらず、仔稚魚の生産の制限要因となっている。ミジンコを小規模タンクで安定的に大量培養できれば、淡水魚の生産に大きく貢献できるばかりか、希少種の繁殖や新たな養殖魚種の開発、淡水魚介類の研究にも役立つ。また、ミジンコに栄養強化をすれば、海産魚介類の種苗生産にも使える可能性が高い。


[成果の内容・特徴]

  • ミジンコの生理生態を検討し、生物の観点から以下のような開発上の条件を設定した。
  1. 水面だけでなく、培養水全体にミジンコが生息分散できること。
  2. エアレーションによるミジンコへの傷害を防ぐこと。
  3. 水流をミジンコの遊泳速度(約3cm/秒)以下に抑制すること。
  4. 培養水全体に十分な酸素(DO)を供給すること。
  5. ミジンコの糞その他による懸濁物(ゴミ)をタンク外へ排出すること。
  • 実験の結果、上記の5条件を同時に満足する四重パイプ構造のエアー装置を考案した。
  • 餌料に濃縮淡水クロレラを用い、水温28℃、3日間(72時間)で、円形0.5tタンクの場合、湿重量2.90kg、1tタンクでは7.65kgの大量培養に成功した(表1)。
  • 中2日の植継ぎ(バッチ)培養で、毎日収穫するために3基のタンクを1セットとして、培養システム(図1)を構築し、100、200、500、1,000lの各システムを製品化した。
  • 有機発酵肥料を原料として、新たに開発した「ミジンコ培養液」によって、培養量がさらに増加した(1,000lシステムで日量10kg=5,000万固体)。

[成果の活用面・留意点]

  • 必要時の自家培養が可能であり、多くの淡水魚の種苗生産や飼育に活用できる。
  • より安価な餌料を開発すれば、アルテミアと同等の培養コストをさらに安くできる。
  • 海産魚介類へのミジンコの投与、本システムの海産ミジンコへの応用の展望がある。


[具体的データ]

表1

 

図1

 


[その他]
研究課題名:ミジンコの大量培養システムの開発
予算区分:県単
研究期間:平成9年度~13年度
研究担当者:稲田善和、牛島敏夫
発表論文等:日韓水産増殖シンポ(H10)、日本水産学会、アジア水産フォーラム(H13)で発表