あゆの産地別判別法について
[要約]
あゆの側線上方横列鱗数と下顎側線孔数を計数することによって、産地(系統)の異なるあゆを判別することが可能となった。
人工産、海産、琵琶湖産あゆの鱗数の平均値はそれぞれ12.4枚、18.0枚、15.5~20.1枚であった。また海産、琵琶湖産あゆの側線孔数は左右に4孔あるが、人工産や琵琶湖産の養成種苗では、その数が少ないものもあった。
神奈川県水産総合研究所内水面試験場
[連絡先]042-763-2007
[推進会議]内水面
[専門]資源生態
[対象]あゆ
[分類]調査
[背景・ねらい]
河川のあゆ資源を確保するために、産地の異なる種苗が放流されているが、それらの種苗の特性にあった放流が望まれている。それら種苗の資源管理をするうえで、各種苗を個体レベルで簡易に識別する技術開発が必要となっているので、外部形態から検討した。
[成果の内容・特徴]
- 各種苗は、神奈川県産の他5県で生産された人工産種苗、2000年・2001年に相模湾で捕獲し養成した海産あゆ(海産養成種苗)、滋賀県から提供された姉川に遡上した種苗及び琵琶湖で2000年2月、4月に捕獲し養成した種苗、徳島県の業者が11月に琵琶湖で捕獲され、養殖した種苗、神奈川県早川に放流された琵琶湖産種苗である。
- 測定項目は、側線上方横列鱗数と下顎側線孔数のほか、鱗の配列、下顎の変形等である。鱗数計数の基点は、背鰭第5軟条の付け根とし、墨汁で鱗の輪郭を明確にして実体顕微鏡下で側線鱗の上まで計数した。
- 神奈川県人工産種苗の鱗数は10~14枚、海産種苗は17~19枚と明瞭に区分できた。琵琶湖産種苗(姉川産、早川の放流種苗)は20~21枚と海産種苗と区分できた。その他の種苗は13~20枚と計数され、人工産と海産の数値と重複した(図1)。人工産種苗の鱗数は平均で11.6~15.6枚となり、生産場所によって異なる結果となった。また、その配列の乱れている個体が多かった。
- 姉川産、早川放流種苗及び海産の下顎側線孔数は左右4孔であったが、どの県の人工種苗も2.78~3.58孔と少なく、かつ変形している個体が多かった。
[成果の活用面・留意点]
あゆの由来を迅速に判別できるため、調査現場での活用が可能である。
側線上方横列鱗数や側線孔の数は、生産方法等の飼育環境により値が異なるため、放流場所における種苗の特性値を事前に調べる必要がある。
[その他]
研究課題名:アユ種苗総合対策事業(内水面重要種資源増大対策事業:全国内水面漁連)
予算区分:受託事業
研究期間:平成12、13年度(平成9~13年度)
研究担当者:戸井田伸一
発表論文等:アユ種苗総合対策事業報告書(平成12年度、13年度)