国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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イワナSalvelinus leucomaenisのフッキングモータリティー実験

[要約]
 在来マス類であるイワナのリリース後の生残等について調べ、資源として再生産に寄与する効果的なリリース方法を検討した結果、口腔より奥へ飲み込まれた鉤は、無理に外さずハリスをカットしたほうが良いということが判った。


栃木県水産試験場 水産技術部 資源研究室
[連絡先]0287-98-2888
[推進会議]内水面
[専門]資源評価
[対象]他の淡水魚
[分類]普及


[背景・ねらい]
 近年、制限体長以上の魚を釣り上げても、放流する『キャッチ&リリース』を行う釣り人が増えてきたが、リリース後の生残などはまだ明らかになっていなかった。
 このため、イワナのリリース後の生残等について調べ、資源としての再生産に寄与する効果的なリリースの方法を検討した。


[成果の内容・特徴]

  • 『口腔』と『体表』では、釣獲方法の違いによらず、死亡する可能性は極めて小さかった。
  • 『口腔』と『体表』では、傷口から菌が侵入し、周りの炎症から死亡することが考えられた。
  •  砂を塗してリリースされた魚の生残性は、低くなることが考えられた。(病気を誘引する可能性が大きい)
  • 『食道』では、鉤を無理に外すと死亡する割合が、特に幼魚で高かった。(図1・2)
  • 『口腔』に残留した鉤は、釣獲方法の違いによらず、3週間以内に80%以上が脱落した。
  • 『食道』で、ハリスをカットしてリリースした場合、3ヶ月以内に20~40%が脱落した。(図3)
  • 体内に残留した鉤は、腐蝕により破損・脱落・排出されるケースが見られた。

[成果の活用面・留意点]

  • 効果的なリリースの方法としては、口腔より奥に掛かった鉤は、無理に外さずハリスを切ったほうが生残を高められる。
  • 口腔に残った鉤は、漁法によらず高い割合で排出されるが、食道に掛かった鉤は長期間残留する。
  • 釣獲した魚の取り扱い方法により、リリース後の生残が高められる。


[具体的データ]

表1


 

表2

 

表3
 


[その他]
研究課題名:平成11年度渓流域生態系管理手法開発事業検討会(国庫事業)
予算区分:
研究期間:平成11年度(平成10年度~11年度)
研究担当者:土居 隆秀、中村 智幸
発表論文等:栃木県水産試験場、平成11年度渓流域生態系管理手法開発事業結果報告書、2000 p15~20.