国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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相模川における仔アユの降下と減耗について

[要約]
  相模川の、アユの2(約5km離れた)産卵場から放流した標識仔アユの降下状況に関して、2のうち上流の産卵場から放流した標識魚の再捕尾数のピーク時刻は、同日の総仔アユ降下尾数のピーク時刻と一致した。標識魚の再捕尾数は、上流より下流から放流した時の方が多く、産卵場の位置により仔アユの減耗状況が異なることが示唆された。


神奈川県水産総合研究所内水面試験場
[連絡先]042-763-2007
[推進会議]内水面
[専門]資源生態
[対象]あゆ
[分類]調査


[背景・ねらい]
 アユ資源の年変動が著しく、河川漁業における同資源の確保及び漁場管理に支障を及ぼしている。アユ資源の変動要因解明の基礎資料とすべく、河川内での仔アユの降下及び減耗に関する生態を調べる。


[成果の内容・特徴]
 2000年11月9日に、アリザリンコンプレクソンにより標識した仔アユ(以下「標識仔アユ」)約85万尾を、アユの主要産卵場である海老名市河原口地先(以下「あゆみ橋」)から、同年11月16日に標識仔アユ約22万尾を同主要産卵場の厚木市戸田地先(以下「戸沢橋下流」)からそれぞれ放流した。放流日から翌日にかけて、下流の平塚市田村地先(以下「神川橋下流」)にて再捕を行い、仔アユの採集尾数と河川流量とから仔アユ降下尾数の推計を行った。
 11月9日19時30分にあゆみ橋から放流した標識仔アユは、約8.5km下流の神川橋下流においては6時間後の午前1時から再捕され2時にピークを示した。また、11月16日17時に戸沢橋下流から放流した標識仔アユは、約3.5km下流の神川橋下流においては4時間後の21時から再捕され22時にピークを示した。あゆみ橋放流群のピークの時刻は、同日の総仔アユ降下尾数のピークの時刻とほぼ一致した。戸沢橋下流放流群のピークは、同日の総仔アユ降下尾数のピークより早い時刻に出現し、戸沢橋下流産卵場より上流に大規模な産卵場が存在することを示した(図1)。あゆみ橋から放流した標識仔アユの神川橋下流における降下尾数は約4.9万尾(5.8%)、戸沢橋から放流した標識仔アユの神川橋下流での降下尾数は約3万尾(13.5%)と推計され、産卵場の位置により、仔アユの減耗状況が異なることが示唆された(表1)。


[成果の活用面・留意点]
 河川流量の多少と仔アユの降下時間との関係、仔アユ降下量の日内変化のピークに関与している産卵場の位置(主要産卵場の把握)、河川内における仔アユ減耗量等を把握することにより、アユ資源の変動要因の解明のための基礎資料として活用することができる。

 

図1

 

表1

[その他]
研究課題名:あゆ資源対策研究
予算区分 :県単事業
研究期間 :平成12~13年度
研究担当者:蓑宮 敦
発表論文等:神奈川県水産総合研究所研究報告、第7号、2002。