アジメドジョウの食性
[要約]
アジメドジョウ Niwaella delicata の消化管内容物を調査した。おもな出現種は付着藻類がCymbella ventricosa、Synedra ulna、Melosira varians、水生昆虫類がコカゲロウ科、エリユスリカ亜科などで、摂餌は無選別におこなわれている可能性が高いと考えられた。
福井県内水面総合センター
[連絡先]0776-53-0232
[推進会議]内水面
[専門]資源生態
[対象]アジメドジョウ
[分類]研究
[背景・ねらい]
アジメドジョウの産業的価値は高いものの、増殖対策についてはなされていない。そこで、種苗生産技術開発の一環として、親魚養成の餌料を知るために、河川に生息する本種の消化管内容物の種組成を調べた。
[成果の内容・特徴]
- 1998年6月と7月に福井県の九頭龍川水系の日野川中流域とそれよりやや上流に位置する田倉川の各定点において、採捕された27尾と13尾のアジメドジョウを用いた。また、同時期に、同定点において付着藻類も一定面積を枠取り採集した。
- 採捕されたアジメドジョウの全長は、日野川54~97mm、田倉川53~115mmの範囲にあった。採集された付着藻類の種類数は両定点とも珪藻類の占める割合が高かった(表1)。
- 消化管内容物の種類数は、両定点とも付着藻類が珪藻類、水生昆虫がカゲロウ目の占める割合が高かった(表2)。おもな出現種は付着藻類がCymbella ventricosa、Synedra ulna、Melosira variansなど、水生昆虫類がコカゲロウ科、エリユスリカ亜科などの小型個体であった。
- 珪藻類は付着藻類と消化管内の種組成が似ていた。藍藻類は消化管内からほとんど確認されなかったことから、消化の進行が早いか、または利用されていないと考えられた。消化管内のみで確認された緑藻類のOedogonium sp.、Scenedesmus sp.は止水的環境に、採集量は少ないものの消化管内における出現頻度の高い珪藻類のM. variansは水際などの流れの緩やかな水域に成育している。このことから、本種はこのような水域も餌場として利用していることが示唆された(図1)。
- 消化管内で確認された水生昆虫は、おもに瀬の礫表面に生息している種類であることから、付着藻類とともに無選別に摂餌されている可能性が高いと考えられた。
[成果の活用面・留意点]
本種に対する付着藻類と水生昆虫類の餌としての効果は、今後さらに詳細な検討を加える必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:有用魚種生態調査事業
予算区分:県単
研究期間:平成9年度~13年度
研究担当者:渥美正廣・鈴木康仁・岡部健一
発表論文等:平成12年度日本水産学会秋季大会口頭発表