国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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アユやサクラマスの主な漁場である中流域における最近の河川環境(形状)の変化

[要約]
 アユやサクラマスの主な漁場である神通川と庄川の中流域において、魚類の生息に極めて重要な淵の存在を調べた。両河川では淵の存在は極めて不安定で、消長が激しかった。これらの淵の消長は主に護岸建設などの河川工事により引き起こされ、アユやサクラマスの生息にも悪い影響を与えてきたと考えられた。


富山県水産試験場内水面課
[連絡先]076-475-0036
[推進会議]内水面
[専門]漁場環境
[対象]あゆ
[分類]研究


[背景・ねらい]
 河川環境(形状)は魚類の生息には悪い方向に変化してきたと推察されている。しかし、河川形状の具体的な変化を述べた報告は今まではなかった。本研究では、全国でも有数なアユの漁場がある神通川と庄川の中流域において、最近の河川形状の変化を魚類の生息に極めて重要な淵の存在の消長に重点をおいて明らかにした。


[成果の内容・特徴]

  • 最大水深が2m以上の淵は、1997~2000年に神通川では18から11に、庄川では5から3に減少し、神通川では淵の数は減少する傾向が認められた(図-1)。
  • 両河川では淵の存在は極めて不安定で、期間中に30の淵が消失し、21の淵が新たに形成された。期間中継続した淵は、神通川では4に過ぎず、庄川では皆無であった。
  • 両河川の中流域の河川形状には、典型的な中流域の河川形態型であるBb型の定義(1つの曲がりの中に1対の瀬と淵(M型)がある)は全く適応できなかった。
  • これらの淵の消長は主に護岸建設などの河川工事により引き起こされ、アユやサクラマスの生息に悪い影響を与えてきたと考えられた(図-2,3)。


[成果の活用面・留意点]
 本成果は、漁協・国土交通省・大学等で構成する「河川研究会」や河川工事を行う土木・建築業者で構成する「ビオトープ研究会」などで公表され、河川環境を魚のより棲みやすいものへと改善するのに役立てられている。

 

図1

 

図2

 

図3


[その他]
研究課題名:河川内有効利用調査研究、河川内有用魚介類生態調査研究
予算区分:富山県単独事業
研究期間:1997~2001年
研究担当者:田子泰彦
発表論文等:神通川と庄川の中流域における最近の淵の消長、水産増殖、49巻3号、397-404、2001