生田緑地(川崎市内)におけるホトケドジョウの生息地復元試験
[要約]
絶滅危惧種であるホトケドジョウの生息地を、川崎市多摩区の生田緑地内に復元するため、同所にビオトープを3箇所造成し、試験放流を行った。いずれの復元池でも、稚魚が大量に発見され、繁殖が確認された。また、翌年には、繁殖した稚魚が親魚に成育し、2代にわたって繁殖した。
神奈川県水産総合研究所 内水面試験場
[連絡先]042-763-2007
[推進会議]内水面
[専門]漁場環境
[対象]他の淡水魚
[分類]普及
[背景・ねらい]
環境省絶滅危惧種であるホトケドジョウは、県内での生息地の減少が著しく、川崎市内の生田緑地でも、開発により生息地の谷戸が失われた。当試験場に緊急避難し、生田緑地内に造成したビオトープに、試験放流を行い、生息地の復元を図る。
[成果の内容・特徴]
- 地域住民他と連携して、3とおりの復元池を造成し、ホトケドジョウを放流した。平成10年に、湧水源の小川を堰き止めて図1の復元池a(面積10.9m2・湧水量7~31リットル/分・最大水深50cm)を、また既存の池を改造して復元池b(4.2m2・7~31リットル/分・45cm)を造成し、4月に10尾(平均体長47.5mm)ずつ放流した。5月に両池とも大量の稚魚が発見され、繁殖が確認された。翌年の平成11年4月には、成魚がa池では41尾(49.2mm)、b池では7尾(44.4mm)採集され、前年に繁殖した稚魚の成育が確認された。さらに、これらの個体が繁殖し、a池で最大215尾、b池で最大647尾の稚魚が確認された。
- 平成11年には、新たに池を掘り、谷戸から導水して復元池c(4.8m2・6~56リットル/分・50cm)を造成し、3月に20尾(46.5mm)を放流した。5月には大量の稚魚が発見され、最大で647尾を確認した。9月の調査では、118尾(22.3mm)を採集した(図2)。
- このように、生田緑地内のホトケドジョウ復元池では、2代にわたって本種が繁殖したことを確認し、小規模のビオトープで復元できる可能性が示唆された。
[成果の活用面・留意点]
本研究成果は、今後のホトケドジョウ生息地の復元に活用する事ができる。なお、本種は希少魚種であるので、復元地の管理に注意する必要がある。
[その他]
研究課題名:川崎市生田緑地におけるホトケドジョウの生息地復元
予算区分:県単事業
研究期間:平成10~11年度
研究担当者:勝呂尚之
発表論文等:平成10・11年度生田緑地ホトケドジョウ保存事業報告書(1999,2000)
2000年度日本魚類学会年会講演要旨,33,(2000).