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2025(R07).2.14 魚類の回遊履歴推定の基盤となる太平洋の窒素・炭素同位体比マップが完成

令和 7 年 2月14日

国立研究開発法人 水産研究・教育機構

国立大学法人東京大学

 

魚類の回遊履歴推定の基盤となる太平洋の窒素・炭素同位体比マップが完成

ポイント

  • 植物プランクトンの炭素・窒素同位体比マップを太平洋全域で初めて作成
  • 植物プランクトンの同位体比に表層の硝酸塩濃度の情報を加えることで、太平洋の生態系を10のグループに分類
  • 植物プランクトンの同位体比の特徴は一定の濃縮率で捕食者に伝わるため、本成果はマグロ類など捕食者の回遊履歴や摂餌海域の推定への応用が期待される

【概要】

 マグロ・カツオ類や鯨類、サメ類の中には、太平洋を横断するほどの距離を回遊するものがいます。こうした高度回遊性の生物が、どの海域のどのような生態系を利用しているかを調べる方法として、対象生物の炭素・窒素安定同位体比分析が近年幅広く用いられています。この手法は、生態系の基盤となる植物プランクトンの炭素・窒素同位体比が、海域間で異なることを利用しています。海域ごとの同位体比の特徴は、食物連鎖を通じて一定の濃縮率で高次の消費者に伝えられることから、対象生物の同位体比を調べることで、その生物が過去に生息した海域の情報を得ることができます。

 今回、水産研究・教育機構と東京大学大学院農学生命科学研究科、東京大学大気海洋研究所のグループは、太平洋全域における植物プランクトンの炭素・窒素安定同位体比の地理的パターンを、実測に基づき初めて明らかにしました。本グループは、様々な調査航海でサンプルを取得し分析を行うと同時に、過去に報告された値を収集し、太平洋全域をカバーする炭素・窒素安定同位体比のデータを得ました。さらに異なる海域の同位体比が反映している環境の違いを解析し、炭素・窒素同位体比と硝酸塩濃度の違いに基づき、太平洋の海域が10グループに分かれることを示しました。ここで得られた結果は、回遊性の生物の生態学的研究を行ううえで重要な基盤となることが期待されます。

 

 詳細(PDF:1,039KB)