夏季の伊勢湾におけるカタクチイワシ産卵場からシラス漁場への仔魚の輸送と流動
[要約]
伊勢湾上層の循環流によって、湾北中部に形成されるカタクチイワシの産卵場から湾中南部および渥美外海沿岸に形成されるシラス漁場へ仔魚が輸送されることがわかった。
愛知県水産試験場 漁業生産研究所 海洋資源研究室
[連絡先]0569-65-0611
[推進会議]中央ブロック
[専門]資源生態
[対象]いわし
[分類]調査
[背景・ねらい]
伊勢湾における卵採集数とシラス漁獲量との間に相関が認められることから、夏季を主体に形成される伊勢湾の産卵場からシラス漁場に仔魚の輸送があると考えられている。そこで、卵・仔魚の分布と流れの構造との対応を調べ,伊勢湾の産卵場からシラス漁場への仔魚の輸送経路を検討した。
[成果の内容・特徴]
- 産卵場は,伊勢湾北部から中部の三重県寄りと渥美外海の志摩半島沿岸に形成された。体長4~10mmの仔魚は,伊勢湾北中部の知多半島寄りと,知多半島南岸から湾口部を経て渥美外海沿岸に至る海域に分布していた(図1)。シラス漁場は,伊勢湾の知多半島西岸と南岸および渥美外海沿岸の湾口よりに形成された。
- 志摩半島沿岸の産卵場からは,陸棚縁辺に沿った1kt程度の東向きの流れのために,仔魚の渥美半島沿岸への輸送はなかったと推測された。一方,伊勢湾の産卵場からは,湾南部の反時計回りの循環流により知多半島南岸から湾口部を経て渥美外海沿岸に至る海域へ,また,湾北部と湾中部の時計回りの循環流により湾北中部の知多半島寄りを中心とした海域へ仔魚の輸送があり,湾口部から渥美外海沿岸にかけてと湾北中部知多半島寄りの海域から漁場へ仔魚の輸送があったと推測された(図2)。
[成果の活用面・留意点]
伊勢湾の産卵場は漁獲されるシラスの重要な補給源と考えられることから,シラス補給量の増大のために,産卵期における成魚の保護を検討する必要がある。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:内湾再生産機構基礎調査
予算区分:県単独事業
研究期間:平成2年度~
研究担当者:中村元彦,中村富夫
発表論文等:2001年夏季の伊勢湾におけるカタクチイワシの産卵場からシラス漁場への仔魚の輸送と流動 黒潮の資源海洋研究,第3号,2002.(投稿中)