国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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マイワシ土佐湾産卵群の年齢組成と成熟状態における近年の動向

[要約]
 マイワシ太平洋系群の主産卵場である土佐湾における近年のマイワシ産卵群は、秋~春と比較的長い産卵期を有するものの、成熟年齢は満1歳、1歳魚から3歳魚までの若齢魚主体であることが示され、系群全体と共通の特徴を持つことが明らかとなった。


中央水産研究所 黒潮研究部 資源生態研究室
[連絡先]088-832-0244 
[推進会議]中央ブロック
[専門]資源生態
[対象]いわし
[分類]研究


[背景・ねらい]
 マイワシ等の浮魚類の年齢・成長や成熟状態等の生物特性は資源水準とともに大きく変動し、また、資源低水準期には産卵群が海域ごとに分化する傾向があることが指摘されている。そこで、近年の資源低水準期におけるマイワシの海域別産卵群の生物特性を把握して資源評価及び漁況予測に資するとともに資源管理・資源回復の基礎資料とすることを目的とする研究の一環として、マイワシ太平洋系群の主産卵場の一つである土佐湾において産卵群の年級群構造及び成熟状態を把握するために各種調査船調査等により得られた資試料を解析した。


[成果の内容・特徴]
(1)土佐湾におけるマイワシ産卵群の年級群構造と成熟状態について以下のことが明らかとなった。

  • 1999年秋~2000年春の産卵期:1998年級群が産卵群の主体で、秋季(11月)と春季(3月)に産卵盛期がみられた。
  • 2000年秋~2001年春の産卵期:1998年級群と2000年級群が産卵群の主体で、秋季(11月)と春季(2月)に産卵盛期がみられた。
  • 成熟体長・年齢:被鱗体長150mm以上の満1歳魚以上が産卵に参加し、満1~3歳の若齢魚が産卵群の主体をなすと推定された。

(2)海域間の比較により以下のことが明らかとなった。

  • 土佐湾の産卵群の主体となる年級群構成は各産卵期ともにマイワシ太平洋系群全体の年級群構成とほぼ一致し、産卵の主体は本系群の中で比較的豊度の高い年級群であることが示された。
  • 土佐湾では秋季の産卵も比較的顕著であるが、成熟係数及び体長・年齢組成からみて春季産卵群が主体となることが推定され、関東近海の産卵群の特徴と矛盾しないことが明らかとなった。


[成果の活用面・留意点]
 以上の結果から、低資源水準期においても、マイワシ太平洋系群の海域別の産卵群は共通した生物特性を有することが明らかとなり、各海域における産卵群の年級群組成や成熟状態の特徴を解析することにより系群全体の傾向を把握可能であることが示唆された。


[具体的データ]

図1
 

図2


[その他]
研究課題名:マイワシ等主要浮魚類の海域別産卵群の生物特性の把握及び系群構造の解明(経常研究)
受託事業(資源評価調査:水産庁)
予算区分 :交付金・資源評価調査
研究期間 :平成13年度(平成13年度~17年度)
研究担当者:本多 仁、梨田一也、阪地英男
発表論文等:Recent trends in age structures and maturity conditions of the Japanese sardine, Sardinops melanostictus, spawning in Tosa Bay. Fisheries Science 68巻別冊(投稿受理2002年刊行予定)