三宅島噴火1年後の沿岸漁場の状況と噴火災害漁場図の作成
[要約]
平成12年6月から始まった雄山の噴火で影響を受けた三宅島の沿岸漁場について、噴火1年後の状況を潜水調査した。漁場の被災状況をもとに漁場の類型化を行うと、(1)噴火の影響が少なかった漁場、(2)降灰の影響を受けた漁場、(3)陸上からの泥流の被害を受けた漁場、(4)地震による崖崩れの被害を受けた漁場の4つのパターンに分けられた。
東京都水産試験場資源管理部
[連絡先]03-3433-3253
[推進会議]中央ブロック
[専門]漁場環境
[対象]その他
[分類]調査
[背景・ねらい]
平成12年6月から始まった三宅島雄山の噴火活動により、大量の火山噴出物が沿岸漁場に降下・流入し、水産生物に大きな被害を及ぼした。東京都水産試験場では、平成12年8月11日の第一次調査以来これまで7回の潜水調査を実施してきた。平成13年7月、噴火約1年後の調査を実施し、火山噴出物の堆積状況、有用生物の生息状況の把握結果をもとに、漁業者への情報提供とともに全島避難解除後の漁業復興に向けた行政施策、漁場利用等の参考資料として活用する。
[成果の内容・特徴]
平成13年7月、三宅島周辺の21地点で実施した潜水調査結果を基に被災漁場の現状について漁場の類型化を行うと以下の4つのパターンに分類できた。
(1)噴火の影響が少なかった漁場。
・泥流の被害があった立根を除く島の南側のベンケ根から阿古カマニワの6地点とハシヤ崎、下根台崎の8地点。
・トコブシは多い所で転石下に10個以上の生息が確認され、通常に生息していた。
(2)降灰により影響を受けた漁場
・平成12年8,9月の降灰によりトコブシ等が被害を受けた。今回の調査では、漁場に灰は残っていなかった。
・島の北側のジョウネとミネワの2地点。
・トコブシの生息量は転石下に0~0.5個と少なく、テングサ等に代わり石灰藻の優先する岩が増えていた。
(3)泥流により被害を受けた漁場。
・下根崎を除く島の北側のマエハマから東側のアラキにかけた7地点とカタンザキ、立根を加えた9地点。
・流入した火山灰は流去することなく長期間堆積し、カタンザキではトコブシの生息密度は4m2当たり1個体のみと大きな被害を受けていた。
(4)崖崩れにより被害のあった漁場
・平成12年7月30日の地震により崖崩れの被害を受けた地点。
・島の西側のユノハマ、ウノクソの2地点。
・一部堆積物の流去が確認されたが、転石の間を流入した砂礫が埋め、その上に泥の堆積が一部観察された。
今回の調査結果と平成13年3,4月の調査結果等をもとに、火山噴出物堆積状況及びトコブシの生息状況等に基づく「三宅島噴火災害漁場図」を作成した。
[成果の活用面・留意点]
噴火後1年目の平成13年7月に実施した潜水調査結果や作成した噴火災害漁場図を漁業復興に向けて実施したトコブシ種苗放流地点の選定やイセエビの試験操業等に活用した。また、調査した21地点の中から7地点を設定し、今後の追跡調査の定点とした。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:三宅島等災害復旧
研究期間:平成12年度~平成16年度
研究担当者:米山純夫 他(噴火・地震災害調査プロジェクトチーム)