太平洋南区における沖合底びき網漁業の年代別漁業特性の分析
[要約]
太平洋南区における2そうびきの沖合底びき網漁業は、1960年代後半以降90年代初頭までは漁業経営が比較的安定し生産が拡大した。しかし、92年から漁獲量が大幅に減少し、96年以降は更に魚価も低迷したため縮小再編期にある。
中央水産研究所 経営経済部 漁業経営研究室
[連絡先]045-788-7673
[推進会議]中央ブロック
[専門]水産経済
[対象]魚類
[分類]行政
[背景・ねらい]
沖合底びき網漁業(以下、沖底)は、地域によって操業形態や船型が多様であり、漁業特性が大きく異なっている。現在の沖底は全国的に厳しい経営環境にあるが、これを克服するためには地域ごとの漁業特性を把握し、経営の改善点を明らかにして経営の強化を図る必要がある。このため、太平洋南区(以下、南区)の沖底を対象にして年代別の漁業特性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 南区において平均的な水揚げを行っているA漁労体の漁獲売上高の推移をみると、総トン数60トンから75トンへの増トン(代船建造)では、サイド式からスターン式へ操業形態を変更したため漁獲量が増加したが、125トンへの増トン直後は増加したもののその後減少した(図1)。
- 売上高減価償却費率をみると、60トンと75トンの時の減価償却は順調に行われたが、125トンへの増トン後は償却が滞っている。また、60トンと75トンの時は乗組員の給与の方が勤労者の給与よりも高かったが、125トンへの増トン後は逆転した(図1)。
- 125トン船が建造された89年以降については、89~91年は多獲性魚種の漁獲量が引き続き高水準を維持したため1隻あたり漁獲量も1,000トン台であった。しかし、92~95年は多獲性魚種の減少により700トン台に減少し、96年以降は漁獲量の減少はないが、魚価の低迷により漁獲金額が減少した(表1)。
- 以上から、沖底の漁業制度が確立した68年以降の漁業特性は、船型の大型化、多獲性魚種の漁獲量変動、魚価の変化などにより5つの年代に区分できる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 沖底経営体は、2002年8月の指定漁業の一斉更新に向けて、減船及び2そうびきから1そうびき(網口開口板を使用)への操業形態の変更の準備を進めている。ただし、南区における1そうびきは操業実績がほとんどないために、転換が経営に及ぼす影響の分析は困難である。
[具体的データ]
図1 太平洋南区のA漁労体における漁獲売上高、売上高減価償却率、乗組員と勤労者の給与比率の推移
表1 太平洋南区の沖底(2そうびき)における年代別区分と漁業特性
[その他]
研究課題名:沖合底びき網漁業における資本投資の経済性評価手法の解明
予算区分 :経常研究
研究期間 :平成13年度(平成13~17年度)
研究担当者:松浦 勉
発表論文等:太平洋南区における沖合底びき網漁業の経営動向の分析、北日本漁業、第30号、2002年4月(投稿中)