ワカメの低利用部位を利用した高品質な漬物用ぬか床の開発
岩手県水産技術センター・利用加工部
[連絡先]0193-26-7916
[推進会議]水産利用加工
[専門]加工流通技術
[研究対象]わかめ
[分類]普及
[ねらい・目的と成果の特徴]
- ワカメの低利用部位である元茎の食品素材化を図るため、漬物用ぬか床(以下、ぬか床という)への利用を試みた。ぬか床の熟成初期に繁殖しやすいとされる有害微生物を制御するとともに、ワカメ由来の栄養成分を強化することをねらいとした。
- (1) 米ぬかにペースト状にした元茎および食塩を添加してワカメぬか床を調製し、水分と塩分が同一となるよう従来法(水+米糠+食塩)で調製したぬか床を対照に熟成を施した。対照に比べてワカメぬか床は熟成時の乳酸菌の増殖速度が速く、乳酸の蓄積やpHの低下が顕著であり、熟成初期の有害微生物の制御に効果的であることが推定された。
- (2) 野菜の漬込試験では、カリウム等が強化された漬物が得られることを確認した。
[成果の活用面等]
- 一般家庭向けの即席ぬか床として、県内企業数社と商品化の検討を行っている。
[具体的データ]
図1 ぬか床の外観
元茎ペーストの粘性により、ワカメぬか床の中心部は嫌気状態となるため乳酸菌が増殖しやすい環境になる(図1)。
熟成が進むにつれ、どちらも乳酸菌が微生物叢を優占するようになるが、乳酸菌の増殖は対照よりもワカメぬか床の方が速く乳酸の蓄積も多い。
図2 ぬか床のpHの推移
熟成は25℃で実施し、1回/日の頻度でかきまぜた。
乳酸による数種の有害微生物の増殖下限pHを確認する試験では、供試菌はpH4.5~5.5程度で増殖が抑制された。ワカメぬか床は熟成9日目でpH4.0にまで低下するため、熟成初期から有害微生物の増殖制御が可能になる(図2)。
図3 漬込前後のキュウリのカリウム含量
(無水物換算値)
対照に比べてワカメぬか床はタンパク質が少なく、炭水化物やミネラルを多く含んでいる。
中でも、ワカメに多く含まれるカリウムが強化されており、野菜を漬け込むことで同成分を強化した漬物が得られる(図3)。
その他、ワカメ由来の水溶性の栄養成分が強化されていることが期待される。
ワカメぬか床で得られた漬物は、一般のぬか漬の風味を有している。