二枚貝捕食者における麻痺性貝毒成分の蓄積
中央水研・加工流通部
[連絡先]045-788-7670
[推進会議]水産利用加工
[専門]赤潮・貝毒
[研究対象]甲殻類
[分類]行政
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 二枚貝とそれを捕食するカニ類における麻痺性貝毒の蓄積量を調べ、食物連鎖過程における毒成分の動態を解明する。
- 福島県小名浜において採取したトゲクリガニの肝膵臓から、マウスアッセイにより大で80MU/gの毒性を検出した。
- 潜水調査ではトゲクリガニによるムラサキイガイの捕食が観察され、また、その毒性レベルは二枚貝類と対応しており、トゲクリガニの毒化は食物連鎖を通じたものと考えられた。
- ムラサキイガイに比べ、トゲクリガニではGTX(ゴニオトキシン)2および3の割合が高くなっており、食物連鎖の過程での毒成分の還元的変換が示唆された。
[成果の活用面等]
- 有毒プランクトン発生海域の食用対象生物の安全性確保に貢献する。
[具体的データ]
図1.トゲクリガニ(Telmessus acutidens)
表1.小名浜で採取した二枚貝およびトゲクリガニのマウス毒性
トゲクリガニ(図1)の生息域は東京湾以北といわれており、北日本の一部地域では、食用対象種として漁獲されている。アワビ稚貝などの食害種としても知られるなど、貝類への嗜好性は高い。二枚貝類から規制値(4MU/g)を超える毒性が検出されたとき、トゲクリガニ肝膵臓部から80MU/gの毒性が検出された(表1)。また、イガイから微量に貝毒成分が検出された年は、トゲクリガニから検出した毒成分も微量であった。
表2. トゲクリガニとムラサキイガイの毒成分含量とその組成
毒成分組成を分析した結果(表2)、トゲクリガニにおいてGTX2+GTX3の比率が増加していることから、GTX1およびGTX4成分からの還元的な変換が示唆された。