瀬戸内海におけるイワガキ養殖
愛媛県中予水産試験場 増殖室
[連絡先]089-983-5378
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]飼育環境
[研究対象]かき
[分類]普及
[ねらい・目的と成果の特徴]
- 日本海沿岸を中心に養殖が行われているイワガキについて、愛媛県海域における養殖の適否を検討した。また、コレクター(ホタテ貝殻)への稚貝の最適付着密度を検討した。
- 1)瀬戸内海(伊予灘海域)においても本種の養殖が可能であることが明らかになった。
- 2)コレクター1枚当たりの稚貝付着密度は40個程度が適当であると考えられた。
[成果の活用面等]
- 伊予灘海域における普及対象種となり得る。
[具体的データ]
1.瀬戸内海における養殖の適否
図1 養殖3年目のイワガキの重量組成
宇和海産イワガキの稚貝を用いて、2000~2002年に伊予灘(伊予市)において垂下式養殖試験を実施した。また、宇和海(宇和島市)においても同様の試験を実施し、比較対象とした。
生後3年目の平均全重量は、伊予灘が204±73g、宇和海が207±67gで、その組成もほぼ同様であった。また、約10%の個体が300gを超えていた。現在流通している養殖イワガキは、約3年の養殖期間を経て300g程度に成長したものから出荷されていることから、伊予灘および宇和海でも本種の養殖が可能であると思われた(図1)。
2.最適付着密度の検討
図2 生残率の推移
コレクターに付着したイワガキ稚貝を、付着密度別にA(平均7個/枚)、B(同12個/枚)、C(同42個/枚)、D(同78個/枚)、E(同104個/枚)の5段階に類別し、コレクター10枚を1連として垂下式養殖(伊予市、2年6ヶ月)を行い、イワガキの成長と生残を調べた。
養殖期間中の減耗は付着密度が高いほど大きく、特にD区とE区においては養殖開始後4ヶ月目までの間に60~70%が死亡もしくは脱落した(図2)。試験終了時の生残貝数は、各区ともコレクター1枚あたり20個未満となり、開始時の付着密度との間には相関はみられなかった。また、付着密度が低いA、B区においても食害等による50%程度の減耗がみられた。
イワガキの成長をコレクターごとに整理すると、試験終了時の付着貝数が20個未満であれば全重量や身入り(全重量に対する軟体部重量の割合)には、大きな差はみられなかった。これらのことから、養殖開始時のイワガキ付着密度をコレクター1枚あたり40個程度に設定すれば、もっとも効率が良いと考えられた。
現在、この知見に基づきコレクターへの稚貝付着密度を40個前後に安定させる種苗生産方法を検討している。