広島湾のマクロベントスが有毒プランクトンのシストの現存量と発芽に及ぼす影響
瀬戸内海区水産研究所・瀬戸内海海洋環境部・生産環境研究室
[連絡先]0829-55-0666
[推進会議]瀬戸内海ブロック
[専門]生態系
[研究対象]ベントス、植物プランクトン
[分類]研究
[ねらい・目的と成果の特徴]
- これまでの調査から、広島湾海底泥中のマクロベントス糞中には、麻痺性貝毒の原因となるAlexandrium属有毒プランクトン(A. tamarense+A. catenellaと推定される)のシストの全現存量の約3割が含まれていることが明らかとなっている。そこで、マクロベントスのイソゴカイとシズクガイによるシストの捕食と発芽への影響を実験的に検討した。
- 1) イソゴカイとシズクガイはシストを捕食し、糞として排泄するが、糞中のシストは発芽能力を保持していることを明らかにした。
- 2) イソゴカイ飼育泥中のシストは減少しないが、シズクガイの場合は有意に減少することから、シズクガイは捕食したシストの大部分を消化していることが示唆された。
- 3) 以上の結果は、マクロベントスが有毒プランクトンの個体群動態に影響を及ぼしていることを示唆するものである。
[成果の活用面等]
- ・マクロベントスの捕食による有毒プランクトン防除技術の開発
[具体的データ]
図1:糞中のAlexandrium属有毒プランクトンのシスト
海底のマクロベントスの糞(左)と同じ糞を染色して壊したもの(右)。糞中で光っているのがシスト。
図2:シズクガイ飼育後の泥中シスト密度の変化
シストを含む泥中でシズクガイを10日間飼育したところ、泥中のシスト密度は対照区の泥に対し有意に減少した。