日本沿岸から分離したAzadinium poporum 2株中のアザスピロ酸類縁体の組成
公表日 2021年6月22日
研究実施者:水産技術研究所 水産物応用開発部 安全管理グループ 小澤眞由ほか
アザスピロ酸(AZA)とは有毒渦鞭毛藻類が産生する比較的新しい下痢性貝毒です。本研究では、液体クロマトグラフィー質量分析により、国内で分離された2株のAzadinium poporumが持つAZAを分析し、国内のAZA産生種における詳細な毒成分組成を始めて明らかにしました。これらの主要な毒成分はAZA2であり、複数の既知AZAが検出されたほか、13種の新奇AZAを発見しました。
AZAとはAzadinium属やAmphidoma属の一部の渦鞭毛藻類が産生する比較的新しい下痢性貝毒です。コーデックス委員会が定める国際的な食品規格では、AZA1, 2, 3が監視対象の成分となっており、基準値は可食部あたり0.16 mg (AZA1等量)/kgと定められています。国内ではAZAによる食中毒事例は報告されておらず、国内沿岸のA.poporumのAZA産生能や主要毒についてもほとんど明らかにされていませんでした。一方で、近年、日本沿岸からAZA産生種であるA. poporumが複数分離され、AZAによる食中毒リスクが危惧されています。そこで、本研究では、日本沿岸から分離された2株のA.poporum(mdd421株、HM536株)について毒成分組成を調べました。
AZAの分析には、高速液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析装置(LC-MS/MS)と、高速液体クロマトグラフィー/四重極飛行時間型質量分析装置(LC-QTOFMS)を用い、複数の分析モードで分析しました。
これにより、国内沿岸から分離された2株のA. poporumではアザスピロ酸-2(AZA2)が主要毒であることが分かり、これは二枚貝のAZAによる毒化リスクの管理において重要な知見であると考えます。また、AZA2を含む既知のAZAだけでなく、微量な毒成分として13種類の新奇AZAを発見し、質量分析により化学構造を推定しました。今後は、これら新奇AZAのより詳細な分析を進め、構造決定に向けた研究を進めていこうと考えています。
本研究は農林水産省「安全な農畜水産物安定供給のための包括的レギュラトリーサイエンス研究推進委託事業:海洋生物毒生成藻類と海洋生物毒に関する研究」によって実施されました。
本成果は、Toxicon 199 (2021) 145-155に掲載されました。