ズワイガニに対するかごの漁具能率の推定
[要約]
島根県隠岐諸島周辺海域において曳航式深海用ビデオカメラによってズワイガニの分布観察を行った直後に、目合の異なるかご漁具による漁獲試験を行い、かご漁具の漁獲と生息密度との関係を調べた。かごの漁獲量は、生息密度に一次比例して漁獲が多くなり、本調査手法によりかご漁具の漁具能率を推定できることを確認した。
水産工学研究所・漁業生産工学部・漁法研究室
連絡先 0479-44-5951
推進会議 水産工学
専門 漁業生産
対象 ズワイガニ
分類 研究
【背景・ねらい】
ズワイガニの資源量は、現在かごやトロ-ル網などの調査漁具の漁獲結果から推定されている。しかし、これらの調査漁具の漁獲特性が充分に把握されていないため、サンプリングの定量性に疑問が残されている。ズワイガニはTAC が設定されているため、精度の高い資源量推定を行う必要がある。そのためには、調査漁具の漁獲効率や漁獲能などの漁獲特性を把握する必要がある。本研究では、ズワイガニの生息密度を推定するために開発した曳航式深海用ビデオカメラを用いて、予めズワイガニの生息密度を観測した直後に調査用かごによる漁獲試験を行い、生息密度とかごの漁獲との関係を調べた。
【成果の内容・特徴】
- 曳航式深海用ビデオカメラでズワイガニ類の生息密度を観察した後に、目合の異なる調査用かごによる漁獲試験を行い、生息密度と調査用かごの漁獲量との関係を検討した。調査に使用したかごは、目合150mmのかご10個、130mmのかご10個、25mmのかご20個、合計40個のかごで構成された漁具を用いた。これらのかごを系統誤差を小さくするめに、3種類のかご(25mmのかご2個、150mmのかご1個、100mmのかご1個)を1ブロックとし、各ブロック毎にかごの配列を乱数表により決定した。かご漁具の浸漬時間は資源調査で行われている一昼夜とし、曳航式深海用ビデオカメラによる生息密度の観察は投縄直前または前日に行った。図1にこれら40個のかごで漁獲された総漁獲尾数と生息密度の関係を示した。かごの漁獲量は、生息密度に一次比例して漁獲が多くなり、本調査手法によりかごの漁具能率を推定できることを確認した。
- 図2に目合25mmかごの1籠当たりの漁獲尾数と生息密度の関係を示した。目合25mmのかごは、ズワイガニ資源量調査で使用されているかご漁具である。図から明らかなように、かごの効率を1とした場合、相関関係を示す1次式の係数は、その面積内にいるすべてのズワイガニが漁獲される面積を示す。図2では、生息密度は1000平方メートル当たりのズワイガニの尾数を用いているので、かごの効率を1とした場合、1657平方メートルの面積内にいるすべてのズワイガニが漁獲されることを示す。したがって、調査用のズワイガニかごの漁具能率を約1700平方メートルと推定することができた。
【成果の活用面・留意点】
本手法によりズワイガニ類に対する調査用かごの漁具能率を推定することができたため、可能となったため、調査用かごの漁獲から従来より高い精度での資源量評価が可能となった。本研究で得られたパラメ-タ-はズワイガニの資源評価票の作成のための資料として利用できる。
【具体的データ】
【その他】
研究課題名:漁具の漁獲効率の推定に関する基礎研究
予算区分 :経常・資源調査費
研究期間 :平成9~12年
研究担当者:渡部俊広