フタホシイシガニ及びヒメガザミの利用技術の開発
[要約]
未利用資源であるこれらカニ類の鮮度保持・保存方法、原料特性及び栄養特性を把握し、ペースト化、微子化等により栄養特性を生かした新しい食品素材を開発する。
山口県水産研究センター外海研究部、加工開発グループ
[連絡先]0837(26)0711
[推進会議]水産利用加工
[専門]加工流通技術
[対象]他のかに類
[分類]普及
[背景・ねらい]
本県瀬戸内海側を操業する小型底びき網漁業の漁獲物の内、投棄魚の第1位と第8位を占めるこれらカニ類は、一部が珍味として加工されているものの大部分は投棄されている。近年、小型底びき網漁業は、主たる漁獲物であるえび類の漁獲が減少を続け、経営的にも悪化しており、漁業者からは、これらのカニ類の有効利用を、水産加工業者からは、地域の資源を用い、その特色を生かした製品をつくりたいという要望がある。このため、これらのカニ類を用いた、新たな加工品の開発が求められている。
[成果の内容・特徴]
- これらカニ類は瀬戸内海全域の棲息が窺われ、1年生と推測された。本県では5~9月の漁獲が多かった。
- 鮮度の測定は、K値並びに官能的には臭いが有効と考えられた。漁獲後の保存は、3℃が適当で、少なくとも10℃以下が望ましいことが分かった。
- 5~9月の月別一般成分は大きな変動は無かった。遊離アミノ酸はTau,Gly,Arg,Ala,Proが多い。無機物は、Ca,PO4,Na,Mg,Kが多いことが分かった。
- これらカニ類の長期保存は、-16℃以下が望ましい。フタボシイシガニのプロテアーゼ活性は、55~60℃で最も高く、60℃を越えると急速に低くなった。プロテアーゼが失活する温度は、86℃であった。
- 生、ボイル及び蒸煮処理後、乾燥し粉末化した成分の差はほとんど無かった。歩留まりは、生、蒸煮、ボイルの順に高かった。乾燥温度による甲殻の硬さは、95,105,115℃の順に硬いことが分かった。この粉末を用いて、カニ煎餅を試作した。
- 酸により殻を軟化しソフトクラブシェル風のカニを作り、佃煮風の姿カニ、クッキーにトッピングしたものを試作した。
[成果の活用面・利用面]
本県水産加工技術研修事業で業界への技術移転を図るとともに、個別に加工業者を訪問して情報を提供している。
[具体的データ]
殻軟化処理による試作品の製造フロート
冷凍カニ→流水解凍→酸処理→アルカリ中和処理→乾燥→調味乾燥
- → 佃煮風姿カニ
- → クッキーにトッピング→焙焼→姿カニをトッピングしたクッキー
図1 小型底びき網漁船1隻当たりの投棄量
図2 フタの月別一般成分
図3 プロテアーゼ活性に及ぼす温度の影響
[その他]
研究課題名:地域水産加工技術高度化事業(補助事業)
研究期間 :12~14年度
研究担当者:嶋内潤・白木信彦・浅原充雄
発表論文等:平成12年度地域水産加工技術高度化事業成果報告会