ツノナシオキアミの食用利用
[要約]
岩手県沿岸で漁獲されるツノナシオキアミについて、食用化を図るため原料特性等の把握を行ったところ、佃煮の加工に適していることが明らかとなった。
岩手県水産技術センター・利用加工部
[連絡先]0193-26-7916
[推進会議]水産利用加工
[専門]加工流通技術
[対象]他の甲殻類
[分類]普及
[背景・ねらい]
2月から5月にかけて、岩手県沿岸において、約3万トンのツノナシオキアミが漁獲されるが、特有のにおいがある、鮮度低下が早い等の理由から、そのほとんどは養殖餌料、釣り餌など食用以外の用途に利用されているのが現状である。そこで、これを食用化するため原料特性等の把握を行い、本魚種の食用としての利用技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 全長と体重は、100個体の平均で2月25日に漁獲したツノナシオキアミが15.4mm、16.9mg、3月5日が17.8mm、36.3mg、4月4日が19.7mm、47.7mgであった。それぞれの全長組成は図1に示すように、漁獲時期が進むにつれて大型化していた。
- 一般成分は水分76.12~81.99%、粗たんぱく質14.73~18.52%、粗脂肪0.29~2.35%、灰分2.93~3.23%であった(表1)。時期的な成分変動は、水分、粗たんぱく質、灰分に関しては、漁期を通しての傾向は明らかでなかった。しかし、粗脂肪は漁期の経過につれて増加し、4月25日にサンプリングしたものは2月27日のものに比較して約8倍量多く含有することが認められた。
- ツノナシオキアミを食べると下痢を起こすことがあり、ワックスエステルが原因ではないかといわれていたので、ワックスエステル含量を測定したところ0.02~0.07%であった。下痢の原因はワックスエステルによるものではないと考えられた。
- 生及び乾燥したツノナシオキアミを用いて佃煮を試作したところ、生のツノナシオキアミを用いたものは身崩れが少なく、食感もよかったので商品化できると思われた(表2)。乾燥したツノナシオキアミでは、脚の脱落がみられ、また食感が硬く、生原料から製造したツノナシオキアミよりも劣っていた。他に、素干し、煮干し、粉末を試作したが、佃煮がツノナシオキアミ特有のにおいにあった加工法と思われた。
[成果の活用面・留意点]
今まで養殖餌料、釣り餌等に使われていたツノナシオキアミを食用に利用することにより、魚価の向上が期待できる。
[その他]
研究課題名:ツノナシオキアミの加工技術開発
予算区分:特定研究開発促進事業(補助事業)
研究期間:平成13年度(平成8~12年度)
研究担当者:今野智也、上田智広