国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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多賀悠子主任研究員がサケ科学奨励賞を受賞しました

掲載日:2025年1月23日

 

 この度、水産技術研究所環境・応用部門水産工学部の多賀悠子主任研究員らが、2024年度サケ科学奨励賞を受賞しました。受賞題目は以下の通りです。

題目

入力画像サイズの検討による高精度なサケ年齢予測AIの開発

著者

宮島(多賀)悠子1・井上誠章1・大井邦昭1・平林幸弘2・高橋昌也2・鈴木健吾3

(水産機構1水技研水産工学部,2資源研さけます部門資源増殖部,3本部研究戦略部)

学会名:第17回サケ学研究会(2024年12月)

学会名

第17回サケ学研究会(2024年12月)

受賞研究課題の意義

 資源管理のため、サケでは鱗を用いた年齢査定が行われており、冬季の成長停滞期に輪紋間隔が密な休止帯が形成され年齢の指標となる。年齢査定は専門家の目視により行われており、多大な労力を要するため,自動化の需要が高い。深層学習の画像分類分野で主流となった畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional neural network, CNN)の急速な発展に伴い、近年、年齢予測の自動化が様々な種で検討されるようになったが、実用水準の高精度な人工知能(Artificial intelligence, AI)の開発には至っていない。そこで、最適な入力画像サイズを検討することで、CNNによる高精度なサケ年齢予測AIを構築し、AIの実用可能性を検討した。教師データとして、異なる大きさ(240×240~960×960ピクセル(px))のサケの鱗画像と年齢査定結果を使用し、画像データベースImageNetで事前学習させた画像識別モデルResNet152V2に、教師データで追加学習させるファインチューニングを行い、年齢予測AIを作成して性能を評価した。その結果、AIの正答率は679×679px以上で極めて高く、最大で97%(最適AI)を示した。さらに、AIの予測根拠を可視化する事後分析手法Grad-CAMを用い、AIが注目した画像上の領域を調べたところ、最適AIは目視査定と同様に、一貫して第一休止帯より外側を、休止帯に沿って注目した。一方、679×679px未満では過学習傾向が顕著になり、正答率は急激に低下し、休止帯への注目は弱くなった。これは画像の圧縮により、隆起線の詳細情報が失われたためであると推察された。本研究の結果、隆起線の詳細情報が把握できる画像サイズを用いることが精度向上に重要であり、実用水準の高精度な年齢予測AIを構築できることが示された。

左  :多賀 悠子 主任研究員(主著者)

右  :峰岸 有紀 サケ学研究会会長