国立研究開発法人 水産研究・教育機構

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中西部太平洋キハダ・メバチの年齢査定結果の初検証

公表日:2024年6月12日

 

研究実施者:

岡本慶*1・佐藤圭介*1・Allen H. Andrews*2・J. Paige Eveson*3・Caroline Welte*4・Kyne Krusic-Golub*5
・Bryan C. Lougheed*6・Jed I. Macdonald*2・ Francois Roupsard*2・Jessica H. Farley*7

*1 水産資源研究所 広域性資源部
*2 太平洋共同体事務局
*3 オーストラリア連邦科学産業研究機構
*4 スイス連邦工科大学チューリッヒ校
*5 Fish Ageing Services
*6 ウプサラ大学
*7 オーストラリア連邦科学産業研究機構

 

  • 水産研究・教育機構と太平洋共同体事務局らが共同で、キハダとメバチの耳石に含まれる放射性炭素の量を測定して年齢を推定しました。
  • 耳石年輪に基づく年齢査定と放射性炭素による推定年齢は一致し、現行の年齢査定手法が正しいことを裏付けました。

中西部太平洋のキハダとメバチの資源量を推定するためには、年齢と体長との関係が重要な要素の1つとされています。両種の年齢は、耳石に形成される年輪を数えて調べられてきましたが、近年、その正確性が問題となっていました。そこで現行の年齢査定結果の正確性を客観的に検証するため、耳石に含まれる放射性炭素(C14)の濃度*を調べ、太平洋各地で得られたサンゴや魚類の耳石に蓄積されたC14の年変動の記録との比較を行いました。

本研究では、キハダとメバチの耳石を合計285個体分(0歳魚145個体、キハダ76個体(1.2~13.8歳)、メバチ64個体(1.2~13.0歳)。0歳魚を除き耳石の年輪数に基づく年齢査定を行った。)を用いました。まず、参照標本として0歳魚の耳石に含まれるC14濃度を測定し、魚が生まれた年とC14濃度との関係性を図示しました(図A)。次に、検証の対象として1歳以上のキハダとメバチの耳石の約0~0.5歳時に相当する部分(図B)のC14濃度測定と、その魚の漁獲年と耳石の年輪数で査定した年齢から生まれ年を逆算しました。得られたC14濃度をその魚の生まれ年に0.5年を足した年のサンゴと魚類耳石、0歳魚の参照標本のC14濃度と比較したところ概ね一致したことから(図C)、年輪を計数する現行の年齢査定手法は正しい可能性が高いと結論付けました。

本研究成果により、今後も中西部太平洋の両種の年齢査定は既存の手法により可能となり、両資源の資源評価における成長に関する議論に寄与する知見になると期待されます。

*元々自然界に存在するC14は、1950~1960年代に各地で行われた核実験等により濃度が急上昇した後、年々減少していることが知られています。このC14は、サンゴなど長寿の生き物の硬組織に蓄積され、生涯にわたる濃度の変化が記録されています。このサンゴに記録されたC14濃度を年ごとに調べれば、その時系列変化がわかります。

 

本研究は2012-2013年度の国際漁業資源評価調査・情報提供事業(水産庁)のうち国際水産資源変動メカニズム解析事業(水産庁)、および2020-2023年の水産資源調査・評価推進事業のうち国際水産資源調査・評価事業にて実施しました。

本研究成果は、国際的科学雑誌「ICES Journal of Marine Science」に掲載されました。
A.H. Andrews, J. Paige Eveson, C. Welte, K. Okamoto, K. Satoh, K. Krusic-Golub, B.C. Lougheed, J.I. Macdonald, F. Roupsard, J.H. Farley. 2024. Age validation of yellowfin and bigeye tuna using post-peak bomb radiocarbon dating confirms long lifespans in the western and central Pacific Ocean. ICES Journal of Marine Science 81(6): 1137-1149.

https://doi.org/10.1093/icesjms/fsae074