豪雪をもたらすJPCZを日本海洋上観測で初めて捉えた
公表日 2022年2月21日
- 日本に豪雪をもたらすJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)を横断する1時間毎の洋上気球観測によってその実態を捉えることに初めて成功
- JPCZ中心部では、風・気温・湿度・気圧の急変が雪雲のトップ(上空約4km)にまで達していた。このような特殊な気象システムの観測例は皆無
- JPCZ中心部で風向は90度激変しかつ強風化。その距離差わずか15km以内。この急変域に向かって周囲から気流が収束。収束域は極狭く幅は約15km。収束「帯」ではなく、収束「線」
- 水温14度、気温3度での温度差11度で強風(風速17m毎秒)。そのため、大気は大量の水(水蒸気)を暖かい海面から獲得。また、気流が収束することで、それらの水蒸気がJPCZに集中し大雪がもたらされていることを観測により初めて掲示。集中量を降雪に換算すると1日の降雪量2メートルに相当
- JPCZの観測結果は気象予報の精度向上に寄与することから、今後の洋上の恒常的な気象観測が望まれる
日本の日本海側は世界でもまれに見る豪雪地域です。雪は雪国独特の文化を醸し出し、安定した水資源となりますが、豪雪被害が毎年のように繰り返されています。日本の豪雪のメカニズムを理解し、予測することは地球科学的にも重要であるだけでなく、文化の理解、交通や社会への影響の観点からも極めて需要です。豪雪が起こる理由の一つが暖かい日本海の存在と日本海上で発生するJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)*1にともなう強い雪雲であることが気象衛星画像から大まかには知られています。しかし、その詳細な実態の直接観測を行った研究はこれまで無く、その構造は依然として謎でした。我々研究チームは、水産大学校の練習船耕洋丸を用いてその実態を把握することを目的とした大気海洋同時移動観測を2022年1月下旬に実施しました(図1)。 1時間毎の気球観測とそれと同期した海洋観測によってJPCZの実態とそれに及ぼす暖かい海洋の影響を捉えることに初めて成功しました。この研究は、豪雪のさらなる解明と予測において新たな鍵となるとともに、地球温暖化の研究や防災などにも役立つことが期待できます。近年地球温暖化にもかかわらず寒波は頻繁に来襲しています。さらに日本海の海面水温は際だって上昇しているため、気温と水温の差が大きい傾向にあります。もし、これら傾向が続くのであれば、今後もJPCZに伴う豪雪が頻発する可能性があります。
観測者
立花義裕(三重大学教授)、柏野祐二(水産大学校教授)、本田明治(新潟大学教授)、西川はつみ(東京大学大気海洋研究所)、山中晴名(三重大学大学院生)、畑大地(新潟大学学部生)
【用語解説】
*1)JPCZ(Japan sea Polar air mass Convergence Zone:日本海寒帯気団収束帯) シベリアからの寒波が日本に流れ込む際に、暖かい日本海の影響を受けて多数の筋状の雪雲が発生します。それら筋雲の中でとりわけ太く強い帯状の雲が朝鮮半島の付け根付近から日本列島にかけて長さ数百キロメートルにわたってしばしば発生します。これをJPCZと呼びます。JPCZが上陸した地点付近では、周囲と比較にならないほどの豪雪が発生します。
研究内容の詳細
豪雪をもたらすJPCZを日本海洋上観測で初めて捉えた-1時間毎の気球観測に成功-(PDF)(PDF:952KB)
本件に関するお問い合わせ
水産大学校業務推進課 zenpan@fish-u.ac.jp