メジナの幼魚、ヒジキの種苗生産で大活躍!
公表日 2022年4月20日
研究実施者:水産技術研究所 養殖部門 生産技術部 技術開発第4グループ 野田 勉ほか
ヒジキの種苗生産では、アオサ類などの不要な海藻(雑海藻)が繁茂してヒジキの生育を邪魔することが問題となっています。そこで、メジナの幼魚を混養し雑海藻を食べさせて、ヒジキを育てる方法を開発しました。
ヒジキは日本人にとってなじみの深い食材ですが、日本沿岸では漁獲量が激減しています。漁獲量の増加に向けた取り組みとして、人工種苗を用いた養殖や藻場造成に注目が集まっていますが、種苗生産中に雑海藻が繁茂するとヒジキが枯れてしまうため、いかに雑海藻の繁茂を抑えるかがヒジキの安定生産に向けた課題となっています。一方で、全国的に問題となっている磯焼けは、海藻を魚やウニ類が食べてしまうことが原因の一つです。そこで、海藻を食べる魚に、ヒジキの生育を邪魔する雑海藻を食べてもらえないかと考えました。
その候補となったメジナは、海釣りで「くちぶとぐれ」等と呼ばれ、人気がある魚です。過去の研究から、メジナはアオサ類等の海藻を摂餌することが確認されていますが、ヒジキが含まれるホンダワラ類等の摂餌量は少ないことが知られていました。この点に着目し、以下の試験を実施しました。
藻長約12mmのヒジキと雑海藻(アオサ類:アナアオサおよびボウアオノリ)が生育しているコンクリートブロック(19cm×39cm×10cm)1個を、メジナ幼魚(約8cm、12個体)を飼育している水槽に収容し、各海藻の藻長および被度の変化について3日間調査しました。試験の結果、メジナ幼魚は雑海藻を摂餌し、その藻長はアナアオサで半分以下、ボウアオノリで20%以下に減少しました。一方、ヒジキの藻長はほとんど変化しませんでした。また、6時間後、3日後に6尾ずつメジナの胃内容物を調査した結果、雑海藻は摂餌していたものの、ヒジキは全く確認されませんでした。
以上の結果から、メジナ幼魚を利用することにより、ヒジキにほとんど影響を与えず、雑海藻を除去することが可能であることが明らかとなりました。この技術の活用により、ヒジキの安定した種苗の生産の実現が可能になると考えられます。
本研究は、和文誌「水産増殖」70巻1号113–117ページに、2022年4月20日に掲載されました。