抗酸化物質セレノネイン単量体の精製法の開発
公表日:2020年10月4日
研究実施者:水産技術研究所 環境・応用部門 水産物応用開発部 世古卓也ほか
マグロやサバに含まれる抗酸化物質セレノネインは、強力な抗酸化能を有することから新たな機能性成分としての利用が期待されています。本研究では、これまで難しかったセレノネイン単量体を精製する方法を新たに開発しました。
水産技術研究所環境・応用部門水産物応用開発部と水産大学校の研究チームはマグロやサバに含まれる抗酸化物質セレノネインの新しい分離・精製法を開発しました。セレノネインは強力な抗酸化能を有することから新たな機能性成分としての利用が期待されています。利用に向けた研究の進捗には、高純度なセレノネインが欠かせないため、高純度精製品を安定して得る方法の開発が望まれていました。これまでのその原料には、マグロやサバの血液が使用されていたのですが、夾雑物が多いことから研究開発は難航していました。また、セレノネインの精製においては、化学的な性質が類似したエルゴチオネインとの分離も問題でした。今回、研究チームは酵母遺伝資源センターから提供された遺伝子組換分裂酵母株(FY25320)の産生物を原料として、その熱水抽出物からセレノネイン単量体を精製する方法の開発に成功しました。問題のセレノネインとエルゴチオネインとの分離については、分散力効果を特徴としたカラムを用いることで解決することができました。分散力とは分子や原子などに生じる弱い分子間力であり、原子や分子が大きくなるほど強くなります。エルゴチオネインの有する硫黄とセレノネインの有するセレンは同じ16族元素で化学的な性質は類似していますが、原子の大きさが異なるため分離が可能であったと考察しています。
本方法は、セレノネインの機能性研究を推進し、魚食と健康の研究に大きく貢献することが期待される重要な成果です。また、精製工程で有機溶媒が必須でないため、機能性食品開発への応用が期待されます。
本研究は、2018年度水産研究・教育機構交付金研究課題「危害物質や機能性物質の健全性評価法の開発、評価及び素材化」によって実施されました。
この研究成果は、「Separation and purification technology」2021年1月1日号の掲載に先立ち2020年8月20日付のオンライン版に掲載されました。
(https://doi.org/10.1016/j.seppur.2020.117607)